2011年8月31日8:20
(20)NFC/FeliCaの広がりと今後の展望(下)
「何でもFeliCa・NFCになる」FeliCa Plug
搭載した健康・医療機器が続々と登場
FeliCa Plugは、「何でもFeliCa・NFCになる」電子機器版です。FeliCa Plugのモジュールを組み込んだ電子機器は、FeliCaポートやパソリとFeliCa方式で無線通信ができるようになります。すでにエステラやタニタの歩数計、テルモの血糖測定機、山佐時計計器の歩数計、オムロンヘルスケアの体組成系や血圧計にはFeliCa Plugが入っています。オムロンヘルスケアでは、測定したデータを携帯電話経由でクラウドサーバに上げて、個人の健康管理をサポートするASPサービスを行っています。ソニーでもソニー健保と協力しながら、従業員の健康管理に役立てる取り組みをスタートしています。
AES暗号方式を採用した次世代FeliCa ICチップ開発中
従来のDES暗号方式との互換性を確保
カードのラインアップとしては、高機能・高価格な「クレジット・金融・PKI」対応のデュアルチップ、「交通・電子マネー・IDカード・入退・ゲートセキュリティ」などに対応したチップがあります。また、廉価版としては、NFCフォーラム Type3 Tagに対応したFeliCa Lite、FeliCa Lite-Sがあります。
FeliCaカードのハイエンドタイプについては、従来のDES(Data Encryption Standard)暗号方式に加え、AES (Advanced Encryption Standard)を採用します。リーダライタもそれに応じてAESの採用を進めます。FeliCa Liteなどの廉価版については、NFCにも対応します。
次世代のFeliCaチップは、業界最高レベルのセキュリティとなっており、国際標準規格であるISO/IEC15408の評価保証レベルEAL5+以上を取得予定です。高性能かつ高信頼性の実現により多数のアプリケーションに対応するとともに、従来のFeliCaチップよりも低価格での提供を視野に入れています。また、従来のDES暗号方式との互換性を確保しており、現行のインフラも従来通り使用することができます。基本的には従来のカードからDES/AESに対応しているカードに置き換えながら、リーダライタ端末を置き換えていく予定です。
高機能・低価格なFeliCa Lite-Sも開発
1mmを割るチップサイズを実現
ソニーでは、普及している電子マネーや交通乗車券以外にもエンターテインメント、コンテンツ、認証、ID、健康医療分野などの領域にFeliCaが広がると考えています。FeliCa Liteはカードやスマートフォンに貼付したり、キャラクターやフィギアに搭載が可能です。従来から提供するFeliCa Liteに加え、さらに高機能・低価格化したFeliCa Lite-Sも開発しています。
FeliCa Liteは、コスト重視なユースケースとして、カードやシールなどさまざまな形状を実現します。FeliCa Lite-Sでは、1mmを割るチップサイズを実現し、薄さも120μのため、紙カード化も容易になります。また、ライトアクセス制御機能の追加により、発行者のみ書き換えることができ、書き込みデータを後で変更することはできません。
NTTドコモおサイフケータイ(iモードFeliCa)903以降であれば、リーダライタ機能はiアプリを起動することができますので、FeliCa Liteに書いてあるURLを読んで、サイトにアクセスするスマートポスターが可能になります。また、「Google Nexus S(Android2.3)」でも同様のことが行えます。
FeliCa Lite小型アンテナモジュールも開発しています。25.9mm×9.1mm(厚み0.5mm以下)と小型ですが、FeliCa Lite通信性能ガイドラインに準拠しています。ケータイストラップに挟みこんで会員証・ポイントカードとして利用したり、キーホルダーに挟み込んで入退管理として活用したり、カーナビなどのデバイスに組み込んでスマートフォンで読むことなどが可能です。
イヤホンガイドの舞台解説システムである「イヤホンガイド」では、FeliCa Liteを回数券カードに使用するとともに、機器に貼って機材を管理しています。また、コアなお客様がお家に帰って講演の特典コンテンツを視聴管理することなども検討されています。
スティックタイプFeliCa ポートが登場
「SDK for NFC」でFeliCa/Type A/B対応機能を利用可能
多様な形状のFeliCa採用事例も増えています。ティップネスや大日本印刷ではリストバンドタイプ、ビットワレットではストラップタイプのEdy、ソフトバンクBBではiPhone4に貼付できる電子マネーシールを開発しています。また、アイオイシステムではFeliCa Plugとeペーパーを一緒にした物流タグを開発しています。
FeliCaリーダライタ系のラインナップとしては、入退出やリテイル決済用途の高機能なものから暗号機能のないタイプまで用意しています。リーダライタに関してもNFC対応やAES対応を強化しています。また、NFC対応FeliCaポート内蔵モジュール「RC-S620/U」「RC-S625/U」「RC-S620/S」「RC-S621/S」もType A/Bの読み取りが可能です。現行のパソリよりも廉価なスティック型のFeliCaポート「RC-S360」も2010年にリリースしました。
SDKについてもTypeA/Bはオプションでしたが、8月1日から「SDK for FeliCa」の名称を変更して「SDK for NFC」となり、Windows向け、および組み込み機器向けを用意しています。
今後はピアtoピアの機能を利用して、テレビやスマートフォン、Androidタブレット端末などの連携が考えられます。Androidタブレットもいろいろな形で世の中に登場していますが、デジタル機器との認証などによりカギの権限を渡すなどの使い方も考えられます。
このように、NFCはグローバルに広がる機運が高まっています。FeliCaはNFC準拠であり、世界とシームレスにつながる環境が整っています。
※本記事は、2011年7月20日にソニーが開催した「FeliCa Solution セミナー2011」の講演を採録したものです。