2019年6月3日8:00
「Wallet+」導入銀行とともに銀行APIを活用したピッチイベント開催
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下のiBankマーケティング(iBank)は、2019年5月31日に記者説明会を開催し、同社が提供するスマートフォン専用アプリ「Wallet+」の概要と、今後の目指す世界について紹介した。iBankでは、「Wallet+」導入銀行との共催で銀行APIを活用したピッチイベントを開催する。
「Wallet+」は70万ダウンロードを突破
月60%、週40%のアプリ利用率を誇る
記者説明会が行われた「DIAGONAL RUN TOKYO(ダイアゴナルラン東京)」は、FFGが東京に設置したコワーキングスペースだ。全国各地の人や企業、アイデア、情報をつなぎ合せて新しい価値を共創するオープンイノベーション拠点となっている。iBankは福岡の企業だが、東京の記者に同社の取り組みを知ってもらう目的で、今回の説明会を開催した。
iBankは、“iPhoneのようなイノベーティブな金融サービスを作りたい”という思いのもと、既存の銀行サービスに捉われない、全く新しい金融サービスをつくる目的として、2014年に事業の構想をスタートした。2016年1月には、FFGの企業内ベンチャーとして、iBankを設立。2016年7月には、中核のプロジェクトとして、金融機能と情報メディアを融合させた新サービス「Wallet+」をローンチした。リリースから約2年9カ月で70万ダウンロードを突破しており、現在、アプリを立ち上げる人は月60%、週40%となっている。
「Wallet+」は、アプリに提携金融機関の口座を登録してもらうことで、口座残高や収支の明細が確認できることに加え、目的別貯金や借入、資産運用(THEO+)ができる金融機能など、お金にまつわる情報コンテンツの配信やパートナー企業から提供されるクーポンを利用可能だ。
たとえば、目的別預金では、9つのカテゴリーから選択して預金ができる。その預金残高は、2019年4月末時点で118億円、累計貯金額は435億円、また、目的別預金累計作成数は23万個となり、他社の類似サービスとの比較でも高い数字を誇る。目的別預金ユーザーの多くがライフイベントにかかわる預金に計画的に取り組んでおり、登録者数は旅行や自動車、住まいの順となる。また、平均目標額の全体平均は64万円となるそうだ。
「個人と法人」の間をつなぐ役割を担う
「Wallet+」を他の地方銀行へ提供へ
銀行とは別会社であるiBankの役割として、「銀行と個人」「銀行と法人」に加え、これまで銀行では直接接点を持つことができなかった「個人と法人」の間をつなぐ役割を担っている。取引先は、情報コンテンツ「mymo(マイモ)」に広告コンテンツを掲載したり、全ユーザーにクーポンを配信することなどが可能だ。iBankではこれまで、180社以上のパートナー企業向けに、広告ソリューションを提供している。
たとえば、ターゲティングメールでは、目的別預金のデータを活用した結果、通常の5倍のサイト遷移率を達成した。また、AI/機械学習を活用した取り組みとして、「●●購入」「高級車」「新車」などのさまざまな文字情報をWord2Vecを使用して解析することで、類似度が高いユーザーへのマーケティングが可能となった。
iBankでは、FFGグループの熊本銀行・親和銀行にも「Wallet+」を提供しているが、そこで知見したノウハウを、他地域で展開していくことに力を入れている。2018年3月からは、沖縄銀行が構築するオープンAPIを活用して、「Wallet+」をサービス実装した。また、2019年3月に広島銀行と山梨中央銀行、2019年4月に十六銀行と南都銀行でスタートするなど、サービスの輪を順次拡大している。
なお、iBankでは、ふくおかフィナンシャルグループ、沖縄銀行、十六銀行、南都銀行、広島銀行、山梨中央銀行との共催で、「Wallet+」と銀行を繋ぐAPIを活用したピッチイベント「Wallet “+” Bank “×” APIs = neoBank’s Services !」を7月11日に開催する。同イベントでは、ベンチャー企業を中心とした参加者がアイデアを出し合い、優秀なアイデアを表彰するという。
ブロックチェーンを活用して地域ポイントプラットフォーム展開
銀行代理業と電子決済代行業の両ライセンスを有する
今後の展開として、アクセンチュアと協力し、ブロックチェーンを活用した、地域ポイントプラットフォームの展開を掲げる。同プラットフォームでは、スマートコントラクトによるキャンペーン設計、事業会社の独自ポイント発行、クロスチェーンによる外部ブロックチェーンとの価値交換の実現に向け、さまざまなビジネスパートナーとの連携を模索している。
iBankマーケティング 代表取締役 永吉健一氏は、金融業務におけるFinTech企業は日本でもさまざまな分類に分けられるが、iBankは銀行のフロントエンドユーザーのサービスとして、金融商品・サービスをリバンドリングする国際で唯一のプラットフォーマーであるとという。
5月末には、新生銀行グループがカード会社のアプラスを通じて、既存銀行との提携により金融サービスを提供する「ネオバンク・プラットフォーム」の提供を発表したが、iBankはまさしく、国内で初めて誕生した、コンシューマー・バンキングを提供する「neoBank(ネオバンク)」の役割を担う会社であるとした。海外では、ゼロ手数料・高金利を強みとするSIMPLEがネオバンクの代表格とされているとしたうえで、銀行代理業と電子決済代行業のライセンスを有している国内唯一の企業であり、サービス領域はSIMPLEに比べてより多岐にわたると自信を見せた。