2021年11月9日8:00
不振が続く複数の百貨店が自社店舗スペースを活用し、リアルとデジタルを融合させたOMOストアによる新たな取り組みに挑んでいる。店舗を持たずにEC展開するD2Cブランドを呼び込み、デジタルネイティブ顧客との出会いを創出。商品説明から決済までスマートフォンで完結する売り場を設計したり、接客を組み合わせたりなど、来店者に新たな購入体験を提供する。従来型ビジネスモデルからの脱却を図る新業態として、収益源につなげていく。
通販研究所 渡辺友絵
記事のポイント!
①大手百貨店が続々と「OMOストア」を開設
②そごう・西武が西武渋谷店にOMOストア「チューズベースシブヤ」開設
③販売機会の損失を防ぐためその場で全商品を販売
④大丸松坂屋の「明日見世」は3カ月ごとに変更してブランドも入れ替え
⑤ショールーミングストアの位置づけで自社サイトに誘客
⑥百貨店は従来の消化仕入れ型に替わる新たな売り場モデルを模索
⑦リアル店舗を活用した先進的な取り組みが不可欠に?
■店舗を持たないD2Cブランドの告知や顧客開拓に活用
大手百貨店はコロナ禍で影響を受けた実店舗への依存体質を見直し、新たなビジネスモデルに着手した。店頭とECを連動させ顧客・商品・在庫の情報を一元化した「OMOストア」を開設し、外部発信できるメディア型のリアルスペースとして活用。商品販売の枠を超え、来店者に価値ある体験やコンテンツを提供する場として展開する。
顧客体験の創出を目指すこれらOMOストアの誘致先は、自ら企画・生産した商品をECで消費者に直販するD2Cブランドだ。基本的に実店舗を持たないD2Cブランドのプロモーションはほぼ自社サイトやSNSに限られてしまうため、リアルスペースを通じて魅力の発信や新規客開拓につなげることを目的としている。
D2CブランドはデジタルネイティブのZ世代やミレニアル世代と相性が良いため、OMOストアはスマホ活用前提の空間とした。QRコードやキャッシュレス決済も導入し、店頭とECをスムーズにつなぐ体験ができるようになっている。
■そごう・西武は決済までスマホ完結の購買体験を提供
そごう・西武は2021年9月、西武渋谷店にOMOストア「チューズベースシブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA)」を開設した。2つある展示室エリアでは、同ストアのキーワードである「SDGs」を切り口に、ファッションやコスメ、雑貨などのD2C企業を中心に51ブランドの商品を展開。掲げるテーマを半年ごとに変え、共感するブランドの商品を扱っていく。出店者はサービス利用料と、商品が売れた際の販売手数料をそごう・西武に支払う。
販売機会の損失を防ぐため、ショールーミングではなくその場で全商品を販売する。来店者が商品のQRコードをスマホで読み込むと情報が表示され、店頭接客では説明しきれない詳細な内容も閲覧できるようになっている。購入時に専用サイトのスマホ上のカートに商品を登録すれば、買い物かごを持ち歩くことなく店内を回遊できる仕組みだ。店内は無人ではないものの、基本的に自分のスマホ操作で買い物を楽しむ形となる。
会計も完全キャッシュレスで、スマホのカートに入れて決済手続きに進むとLINEアカウントかメールアドレスを入力する画面が表示される。どちらか選んで購入画面に進み、そのままECで購入して自宅に配送するか、レジで決済して持ち帰るかを選べる。
持ち帰る場合はレジで決済用QRコードを見せてクレジットカードかPayPay、LINE Payで支払い、領収書も紙ではなく電子対応となる。決済後に商品の準備ができると、事前に選択したLINEかメールに通知が届く。
フロアには完全キャッシュレスのカフェや、Google製品のディスプレイを体感できる期間限定特別ブースなども設置。買い回りをしながら空間を楽しめるようになっている。
■接客とスマホ活用を組み合わせた大丸松坂屋
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