金融業界に向けたAWSの生成系AIのアプローチは? 国内事業者の迅速な実装を支援へ

2023年9月4日8:00

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、2023年7月27日、「金融業界向け生成系AI記者勉強会」を開催した。説明会では、AWSの生成系AIのサービス概要をはじめ、金融業界における生成系AIをどのように捉えるべきなのか、これに対するAWSの金融チームの取り組みをユースケースを紹介しながら解説した。また、銀行が発行する国際ブランド搭載カードのユースケースに基づいた生成系AIのデモを実施した。

金融ビジネス変革の戦略パートナーを目指す
金融インダストリーに特化した大規模言語モデルも登場

当日はまず、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 金融事業開発本部長 飯田哲夫氏が金融ビジネスにおける AWS の生成系AIへのアプローチについて紹介した。

Amazonでは、2006年より、クラウドサービスを提供している。現在、190カ国以上、世界数百万、日本では数十万以上の顧客へサービスを提供している。また、全国をカバーするパートナーコミュニティがある。累計で129回以上サービス利用料の値下げを行っている。2011年~ 2022年まで、東京、大阪の2リージョンに関する設備・運用投資の総額は1兆 3,510億円となるそうだ。

昨年からAWSの取り組みとして、「Vision 2025」を掲げ、AWSのインフラ プロバイダーから金融ビジネス変革の戦略パートナーへと転換していきたいとした。また、生成系AIも「Vision 2025」に沿う形で顧客に提供する。

AWSのクラウドサービスは、第1ステージ(2011年〜)としてノンクリティカル・システムのための低コストインフラとして提供した。第2ステージ(2017年〜)として、金融ITを効率化するインフラプロバイダーとして展開。「Vision 2025」は第3ステージ(2021年〜)となる。金融サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)が経営課題となる中で、クラウドサービスはサービス変革のための手段として位置づけられるようになった。単なるインフラではなく、課題の解決にフォーカスしたうえで、ビジネス変革を支援している。

具体的には、「Business Model Reinvention-既存の枠組みを超えたビジネスモデルへの挑戦 」「Engagement in New Normal-新生活様式を織り込んだ顧客との関係構築」「Resiliency for the Future-予測できない未来に耐え得る回復力の獲得」の3つとなる。

生成系AIに関しても顧客課題の解決に向けたアプローチを意識している。具体的「Business Model Reinvention」では、独自の基盤モデルを構築したサービス開発、基盤モデルを活用した金融サービスや商品の開発が考えられる。「Engagement in New Normal」では、顧客対応におけるカスタマーエクスペリエンスの強化やパーソナライズされた金融アドバイスや情報の提供がある。「Resiliency for the Future」では、生成系AIが広がる中での運用負荷、セキュリティ、コンプライアンスへの対応に加え、機械学習に最適化されたインスタンスの提供が挙げられる。一方で、顧客との会話の中で、最初の取り組みとして、社内業務全般の生産性向上 (レポート作成、議事要約、社内規定の検索等)、システム開発の生産性向上 (コード自動生成、脆弱性チェック、リファレンスチェック等)などの相談を受けている。

実際、グローバルでメディアに報じられている例として、Bloombergでは幅広い領域の金融データで楽手させた新しい大規模な生成系AIモデル「BloombergGPT」を金融機関向けに開発している。J,P.Morganでは、顧客の投資先選びを支援する会話型のソフトウェアサービスの開発への取り組みを行っている。BBVAは、AWSマネージドサービスであるAmaon Bedrockを活用して生成系AIの活用法を探索しているそうだ。Goldman Sachsでは、法律文書をはじめとする数百万の文書の分類や仕分けなど、生成系AIの活用方法に関する実験をスタートした。

この中でもBloombergに関しては、AWSのサービスを活用して大規模な言語モデルを作っているが、「特徴として業務に特化したモデルが出ており、金融タスクに特化したモデルとして高いパフォーマンスを発揮しています」と飯田氏は説明する。

そうした中、生成系 AI の実装へ向けた課題も明らかとなっており、AWSとしての対応を挙げた。1つは、基盤モデルには多くの選択肢があり、適用業務によってそれを使い分ける必要がある。AWSでは、プロプリエタリ、オープンソースの基盤モデルをニーズに応じて選択し、活用できるプラットフォームを提供していきたいとした。2つ目は、実運用にあたり、インフラコストと運用負荷を抑制する必要があることだ。AWSはマネジメントサービスという形で運用負荷をAWSで吸収している。また、モデルのトレーニングや推論に最適化したインスタンスの提供でコストを抑える。3つ目は、金融グレードでのセキュリティとコンプライアンスへの準拠が求められる点だ。これまでもさまざまな金融事業者がAWSを活用しているが、そこで培ったデータ暗号化、VPC(バーチャル・プライベート・クラウド)内での実装、データのチューニングに使う利用データの特定が可能だ。4つ目は、データのユースケースを特定し、アプリケーションとの連携を実装する必要がある。AWSでは、顧客課題の解決からアプローチ(Working Backwards)することに加え、AWSサービスとの連携を図りながら、実装を行うことができるとした。

10万社を超える顧客が機械学習に取り組む
SageMakerで迅速に生成系AIを開始

続いて、技術統括本部 技術推進グループ 本部長 小林 正人氏が、AWSの生成系AIのサービスや支援プログラムについて説明した。Amazonでは、20年以上にわたり機械学習によるイノベーションに取り組んでいる。商品をより迅速に届けたり、音声応答のAlexaの提供などにおいて、機械学習の技術が入っている。AWSのミッションは、「全てのお客様に機械学習をお届けする」ことで、金融業界の顧客に対しても同様だ。

例えば、Bloombergのように自社で開発したい会社にはAmazon SageMakerやAWSのインフラを提供している。また、用意されているものを素早く組み込みたい顧客には各種AIサービスを提供することが可能だ。AWS上で機械学習に取り組む企業は増えており、現在10万社を超えているそうだ。生成系AIや類似のテクノロジーはすでに同社内でも利用している。例えば、Amazonの検索機能に加え、前述のAlexa 教師モデルでは最小限の入力情報から 多言語による応答を実現している。さらに、Amazon CodeWhispererでは、プログラマーのコメントとコードから推奨コードを自動生成している。

生成系AIに取り組む顧客を支えるAWSのサービスとして、Amazon Bedrock、Amazon SageMaker、Amazon CodeWhisperer、AWS Trainium、AWS Inferentia2を用意している。

Amazon Bedrockは生成系AIのアプリケーションを素早く、簡易に開発して展開できるサービスだ。インフラ管理不要で顧客が使いたい基盤モデルを選択して使うことができる。金融系企業からはデータセキュリティに関する問いをもらうそうだが、同サービスは顧客が持つノウハウを安全に使って、基盤モデルをカスタマイズすることができるという。

最先端の基盤モデルとして、Amazon自身のモデルである「Amazon Titan」に加え、「Jurassic-2」「Claude」「Stable Diffusion」を利用できる。

Amazon Titanは、自然言語処理 (NLP) に特化した「Titan Text」とエンタープライズ検索やパーソナライゼーションに向いた「Titan Embeddings」がある。

Amazon Titanは、20年以上のAmazonの機械学習活用経験と自社事業における稼働実績を利用してつくられている。特徴として、責任のあるAIの利用をサポートできることで、不適切・有害なコンテンツを出力しないように制限することで、顧客が生成系 AI を作るうえで責任ある利用をサポートする。

「Amazon SageMaker JumpStart」は、すぐに始められる生成系AIとなり、最先端の複数の基盤モデルにアクセスできる。数クリックで、最適な基盤モデルを試したり、稼働できる特徴がある。Amazon SageMaker は、5年以上AWSが投資を続ける機械学習ライフサイクル全般を支える基幹サービスだとした。 世界中の生成系 AI の企業利用を促進しています。すでに複数の公開モデルがあるが、7月18日には「Llama 2」 (by Meta)が利用できるようになっている。

生成系AIの基盤モデルを1から作る場合は、大量データと処理するためのコンピューティングリソースが必要となる。AWSでは最適なものを提供するために、トレーニング処理に高いパフォーマンスを発揮する専用のアクセラレーターを用意している。

「Amazon CodeWhisperer」は、アプリケーションをより迅速かつ安全に構築するAIコーディング支援サービスだ。Amazon自身によるプレビュー中、生産性向上課題に対し、CodeWhisperer を使用した参加者は、CodeWhisperer を使用しなかった参加者に比べて、タスクの正常完了率は27%高く、平均で57%も速く完了したそうだ。

アクセンチュアでは、Velocity プラットフォームにおいて、複数のオプションを探した結果、Amazon CodeWhisperer を発見し、開発労力が30%削減している。

AWSでは、顧客の取り組みを後押しするプログラムを提供している。活用分野の検討や実装支援が可能だ。Generative AI Innovation Centerは、AWS Professional Serviceが提供するインベストメントプログラムだ。生成系AIの豊富な経験を持つAWS のストラテジストやサイエンティストと顧客をつなぎ、どんなニーズが生成系AIで使えるか、どういったニーズで使えるかを考えたり、実際に実装を支援している。

日本独自の取り組みとして、大規模言語モデルLLMの開発に取り組む日本の企業・団体を支援「AWS LLM 開発支援プログラム」がある。LLMの事前学習用に利用できるAWSクレジットをプログラム全体で600万USD規模で用意する。また、技術的なメンタリングや、ビジネスで成立するための支援などのサポートも行う。

顧客との関係構築について、カスタマーエクスペリエンスをどう強化していくかが課題となっている。また、パーソナライズされた金融アドバイスや提供の提供が求められる。

金融分野の生成系AI活用ユースケースは?
社内ナレッジに基づいたレスポンスを生成

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