2012年3月12日8:00
グローバルに全方位のNFCビジネスを展開
全世界の1~2割のシェア獲得を目指す
大手SIerのNTTデータでは、ICカードや決済関連のシステム開発で培ったノウハウをベースに、数年前からNFCに関するビジネスの構築を進めている。同社では、POSレジや決済端末、サービスプロバイダ事業まで、全方位のビジネスを展開する予定だ。
NTTデータ
長年培ったICカードや決済分野での強みを生かす
SIerとしての展開はもちろん、SaaS型サービスも展開
NTTデータでは、20年以上にわたり、ICカード関連のビジネスを展開してきた。また、国内最大のカード決済ネットワークである「CAFIS(キャフィス)」を有しており、カード会社や加盟店などとの関係も深い。
過去には、イオンの電子マネー「WAON」のシステム構築、NTTドコモが展開する「iD」のおサイフケータイ向け発行サービスを手掛けた実績があるように、非接触ICカードやおサイフケータイについてのノウハウで先行している強みもある。
「FeliCaのビジネス同様にNFCについても、大手流通事業者、交通事業者、カード会社、通信キャリアが主要なプレイヤーであることは変わらないと思います。これまでのおサイフケータイのビジネスでは、垂直的に各プレイヤーの役割が決められていましたが、NFCになると複数のプレイヤーが介在し、水平的になることで、それぞれの役割の明確化が必要になります。弊社がこれまでペイメントなどの分野で培ってきた経験は、NFCビジネスにおける各プレイヤーとの調整役として生かされると感じています」(NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 プラットフォーム&サービスビジネスユニット課長 大熊喜之氏)
例えば、TypeA/Bを利用した非接触IC決済サービスについても、国際ブランドの仕様に加え、「細かい運用面のルールでは、弊社がこれまでおサイフケータイで培ってきたノウハウなどを提供できる」と大熊氏は期待する。
コンテンツプロバイダにとっては、TypeA/Bのサービスが追加されることにより、FeliCaとの二重運用が発生する可能性もあるが、「お客様にとってもNFCになることによるアドバンテージがなければ前に踏み出せません。そのメリットを見出すため、これまでのSIerとしての展開だけではなく、SaaS型のサービスを提供する可能性もあります」と大熊氏は話す。
公共分野などTypeBでも強み
海外では製品まで含めたパッケージ展開も視野に
NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 プラットフォーム&サービスビジネスユニット主任 余伝道彦氏は、「NFCになることにより、コンテンツプロバイダのサービスの選択肢は間違いなく増えると考えています。ただ、“どうサービスを展開したらいいのかわからない”という声も多いため、その方法を提言する部分が弊社の役割だと感じています」と説明する。
具体的には、ビジネスデザインの提案や、運用も含めて同社で受託する方法が軸になり、クラウドやASP方式などで提供できれば導入が進むと考えている。
NTTデータではTypeBを利用した公共分野のICカードシステム構築についても実績があり、すでにソリューションとして「BizPICO(ビズピコ)」を発表。将来的には、運転免許証や政府で準備を進めている国民IDカードを利用したサービスも検討している。
また、最近では海外企業の買収を行っているように、国内だけではなくグローバルな展開も見据えている。「海外については、NFCに興味を抱く人は多いですが、イメージだけでは話が前に進まないことも多いため、国内で培ってきたノウハウの提供に加え、製品まで含めたパッケージ展開なども検討しています」と大熊氏は説明する。
TypeA/B対応のリーダライタは間違いなく普及する?
全世界のマーケットの1~2割のシェア獲得を目指す
ただ、NFCの場合、複数の企業が同一のサービスを展開する可能性があり、例えば1社の決済サービスを独占して提供することは難しくなるため、「収益性については厳しくなる可能性がある」(大熊氏)としている。
ただ、リーダライタについては、現状のFeliCaに加え、リプレイスのタイミングでTypeA/Bにも必然的に対応する可能性が高い。今後は、それをどうサービスに生かせるかを考えていく方針だ。
また、NFCありきではなく、スマートフォンを活用した送客サービスなどからスタートし、そこにNFCの技術を付加することにより、サービスに厚みを持たせる方法もある。そのため、「従来から強みを持つリアル店舗だけではなく、インターネットでの強みを確立していきたい」としている。
NTTデータでは、「NFCのビジネスのマーケットは、世界中で間違いなく伸びる」(余伝氏)と考えている。大熊氏は最後に、「NFCのマーケットは将来的に数千億円に達すると思いますが、その1~2割は獲得していきたい」と自信をもって語った。