2014年3月26日8:57
無料EC「BASE」が独自カード決済システムの運用をスタート
三井住友カード、スマートリンクネットワークと業務提携
サイト構築のための専門的な知識や準備資金がなくても、誰でも簡単に、あっという間にネットショップを作ることができるサービス「BASE(ベイス)」。この3月から、決済処理事業者のスマートリンクネットワーク、三井住友カードと共同で独自の決済システムの運用を開始した。
インターネットに詳しくなくてもショップが開設できる
かかるのはクレジット決済手数料のみ、維持費用は無料
BASEは、会員登録と商品登録をするだけで、手軽かつスピーディーにECサイトをオープンできるサービスだ。利用者にとって非常に簡明な設計がなされており、HTMLやCSSといった専門的な知識やスキルがない人にも出店への敷居を大きく下げた。2012年11月のサービス開始から現在まで、月間で数千の出店があり、今年2月時点のショップ開設数は7万5,000を超える。
「このサービスをつくるきっかけとなったのが、大分で婦人服の小売店を営む母がネットショップをつくりたいと言い出したこと。インターネットに詳しくない、僕らメンバーの親や祖父母世代でもネットショップがつくれるのが次の時代かな、と思いました。かっこいいショップをシンプルにつくり、ものを売る。そういうところに特化してやっています」と、BASE 代表取締役の鶴岡裕太氏は語る。
従来型のショッピングサイトと大きく異なるのは、基本的にサービス自体への手数料が発生しない点だ。クレジットカード決済時には3.6%+40円の決済手数料がかかるが、初期費用および月々のシステム利用料は無料で、販売手数料の課金もない。
店舗オーナーの大半は個人事業主かと思いきや、現在は出店者の半分ほどだという。無料サイトでありながら商品登録数が無制限、デザインテンプレートの種類も豊富という特性も手伝って企業の利用が増えており、近ごろでは中小企業はもとより大手企業の出店も目立つ。自社の本店カートにBASEのショップを併存させるケースも多い。
協業から生まれた独自の決済システムにより
BASEのサイト内でクレジット決済が完結できるように
通常、ウェブショップにクレジットカード決済機能を搭載する場合には、各ショップ単位で決済代行による審査を受けることが必要で、おおむね2~3週間の期間を要する。一方BASEでは、各店舗の個別での手続きは一切必要ない。開店と同時にクレジットカード決済システムを利用することが可能となっている。
ただし、誰もが利用可能という利便性の反面、万が一、反社会勢力の利用などのトラブルが生じた際には、BASEの店舗全体の決済にストップがかかるというシステムの課題を抱えていたが、この3月より三井住友カード、スマートリンクネットワークと包括加盟店契約を結び、独自の新決済システムの運用を開始することにより、改善がなされた。
ともにCtoCの経験が豊富な両社が、BASEの安心・安全な決済をバックアップする形となった。クレジットカード決済の信頼性は向上しつつ、店舗開設にかかる簡便性が今までと変わることはない。決済手数料も旧システム同様で、代金の3.6%+40円となっている。
新システムをもっともクリーンな方向で運営するために、BASEと両社は約1年かけて話を詰めてきた。「スマートリンクさんはこの市場に一番詳しいなと思いましたし、どうしたら問題を解決できるかを積極的に議論してくださいました。認証アシストサービスはスマートリンクさんにサードパーティとしてお願いしています。そして、CtoCやBtoCの経験豊富な三井住友カードさんが入ってきてくださったのは大きいですね。プラットフォームとしての信頼度も上がりますし、そういうところからのお墨付きがある管理体制ということで安心感に貢献したと思います。三井住友カードさんなしでは実現しない提携でした」と鶴岡氏は振り返る。
今までのPayPalを使った決済では、PayPalのサイトにリンクして手続きを行う必要があった。新決済システムではBASE独自の決済画面を用いるため、BASEのサイト上でクレジットカード情報の入力等、すべての決済手続きを完結できる。購入時のページ遷移数を減らせたことで、購入者には利便性の向上、店舗オーナーにはコンバージョン率のアップが見込める。
商品授受確認やIPチェックの徹底で安全性担保
コンビニエンスストア決済も追加予定
新システムへの移行にともない、安全性の担保が強化された。商品が購入者にきちんと届いたかをBASE側で確認できる仕組みを構築しており、購入時に決済手続きが行われた際に、その売上代金をBASEでいったん預かる形をとっている。商品発送完了から1週間後までに問題が生じていなければ店舗オーナーに精算手続きを行う流れだ。商品内容や受け渡しに万一のトラブルが発生した場合は、BASEが窓口となって随時対応しており、購入者に商品が届かなければ返金できる仕組みをとっている。
不自然な購入行動などについてはBASE側で判断している。IPチェックも徹底しており、「店舗を作った人と購入した人が一緒である、1時間に何回も同じ決済を繰り返しているなどの行動は全部チェックしています。プラットフォームがどんどん広がってユーザーも多くなってきているので、システム的に解決できるところは、なるべくシステムで管理、対応しています。そのあたりはスマートリンクさんと一緒にやっています」(鶴岡氏)。反社会的勢力等の扱いについては、通知の一定期間後に店舗を強制的に削除するなど、今までにも増して厳しい規定となっている。
このところのわずか1、2年の間に、無料でネットショップを作成できるサービスが増え、スマートフォンの普及にともない市場もますますの活況を呈している。BASEでも現在は6~7割がスマートフォンからの購入という。直近の目標としては、流通額で年間百億、店舗数は20万。日本国内に限らずアジアでの展開も視野に入れているとのことだ。
利用者のさらなる利便性向上のために、決算手段の充実も期待される。現状ではまだJCBは使えないが、「コンビニエンスストア決済については近い時期に始められる予定です。お客様から要望があるものは積極的にお応えしていきたいですね」と鶴岡氏は笑顔をみせた。