2015年6月12日8:16クレディセゾンと提携したMatchMoveの強みとは? 東南アジア各国におけるBtoB提携先を活用したバーチャルプリペイドの
ソフトウェアプラットフォーム提供事業(SaaS)を展開
シンガポールに本社を構えるMatchMove Pay Pte Ltd.(MatchMove:マッチムーブ)は、シンガポールでアメリカン・エキスプレス(American Express)やマスターカード(Master Card)とのライセンス契約によるバーチャルプリペイドの発行業務を行っている。同社では、日本のクレジットカード会社であるクレディセゾンと資本業務提携を行い、東南アジアで協力してビジネスを拡大させる方針だ。
現金中心でスマホが普及するアジアのポテンシャルは高い
アジア初、American Expressのバーチャルカードのイシュアに
MatchMoveは、シンガポールでAmerican ExpressとMasterCardブランドのバーチャルプリペイドカードを発行するとともに、東南アジアを中心とした地域における銀行、携帯キャリア、リテールやEC事業者等と提携し、バーチャルブランドプリペイドカードのソフトウェアライセンスサービス(SaaS)の提供事業を行っている。
東南アジアでの決済は、銀行口座やクレジットカードの普及率の低さもあり、77%が現金による支払いだ。クレジットカードを利用しない層も多く、現地の銀行もクレジット決済を推奨していないケースも多いという。各国で独自の支払いシステムを使用しているため、グローバルで利用できない課題もある。
アジアには約35億人が暮らしており、約5,000億ドルのオンライン決済のマーケットがあるという。現状、クレジットカード決済比率が3%、スマートフォンの利用者は25%程度。クレジットカードの場合は、与信が必要だが、プリペイドカードは与信や年齢制限なく、誰でも保有することが可能だ。MatchMove Pay Pte Ltd.CEOのShailesh Naik氏は、「今後も25%のスマートフォン市場はさらに伸びるため、プリペイドカード機能をスマートフォンに搭載することで、大きなビジネスチャンスがあると考えました」と説明する。また、インターネットで商品を購入するだけではなく、個人間の送金のニーズもある。
MatchMoveでは、American Expressのプリペイドカードの発行権を取得。Shailesh Naik氏は、「バーチャルプリペイドカードには、MatchMoveの名前は入れず、提携先のブランドを表示してB2B2Cモデルで展開していくアイデアを気に入っていただきました。American Expressは100年以上の歴史の中で、108のイシュアとしか契約していませんが、弊社はアジアで初めてのバーチャルプリペイドカードのイシュアとなりました」と自信を見せる。
すでにシンガポールでは2014年2月からソフトローンチし、同9月から正式にサービスを開始。また、プラットフォーマーとして、フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイで銀行やe-wallet事業者などと契約している。
「弊社は、プラットフォーマーとして事業を展開していきたいと考えています。たとえば、フィリピンでは、大手の銀行であるBPI(Bank of the Philippine Islands)と契約しており、これまでクレジットカードをお持ちになられていない層を中心にサービスをご利用いただく予定です」(Shailesh Naik氏)
多彩なチャージ手段を提供
プラットフォーマーとして地場の銀行と提携
2015年5月からはAmerican Expressに加え、MasterCardともイシュアのライセンス契約を結び、発行を開始した。
「MatchMove Wallet」では、通常のプラスチックのブランドプリペイドカード同様にインターネット決済が可能だ。また、さまざまな入金方法を用意。シンガポール現地の大手銀行であるDBS(DBS Bank Limited)およびPOSB(Post Office Saving Bank)のATMもしくはインターネットバンキングをはじめ、Amrican Expressに加え、VisaやMasterCardのクレジットカードからもチャージが可能だ。キャリアのSingTel、StarHubが提供するモバイルキャリアビリングによる入金も予定している。
ATMの場合はチャージ手数料が無料で、チャージ額は10シンガポールドルから行える。インターネットバンキングからのチャージ手数料は、入金金額の2.8%もしくは最低1.20シンガポールドルがかかり、10シンガポールドルからの入金が可能。VisaとMasterCardからのチャージの場合は2.5%の手数料が必要となる。
シンガポールでは、自らバーチャルプリペイドカードを発行しているが、海外では現地のパートナーと連携してサービスを展開する計画だ。たとえば、インドネシアでは、コンビニエンスストアでチャージできるようにしたいという。
利用者は、サインアップの際、氏名、eメールアドレス、パスワードなどを入力。項目は7つ程度の確認にとどめており、1分で完了するというのが特徴。シンガポールの法律によると、本人確認前の段階で500ドルまでチャージが可能だ。実際のインターネットショッピングの利用では、ブラウザ上に表示されたカード券面に記載されているカード番号や有効期限を、クレジットカードと同じようにオンラインストアの決済画面に入力することで決済が行える。また、多くのオンラインストアでは、セキュリティコードを入力する必要があるが、10分だけ有効な毎回異なるセキュリティコードが表示されるため、非常に安全性が高いという。
また、プリペイドカード機能に加え、会員間の送金機能やロイヤリティプログラム機能も搭載。
すでにタイの「PAYSBUY WALLET」をはじめ、アジアでもモバイルウォレットサービスが展開されているが、差別化のポイントとしては、“誰でも利用できるお財布になる”ことだという。携帯電話キャリアが中心となるウォレットサービスの場合、キャリアの利用者に限定されるが、MatchMoveのプロダクトはそれに限らず利用できるのが特徴となっている。また、チャージ方法もキャリア課金だけにとらわれず幅広く揃えることも可能であり、ニュートラルな立場で提携先を広げていくことも可能だ。
オンラインに加えオフラインでの展開も検討
クレディセゾンとは企業の目指す方向性が合致
当面の目標としては、まずはオンラインショッピングで便利に利用してもらうこととなるが、将来的にはリアル加盟店での利用への展開も想定している。構想としては、フィジカルなカードを発行し、オンラインでチャージしてもらう方法を検討している。また、直近では難しいとしながらも、長期的にはNFCの展開も視野に入れる。
なお、MatchMoveがクレディセゾンと提携した理由については、クレディセゾンは日本でよく知られた存在であり評価されていること、クレディセゾンも東南アジアでの展開を強化していく方針があり、MatchMoveと合致していることが挙げられる。それに加えて「何より、弊社とクレディセゾンは、独立系であること、提携戦略をとっていることといった企業の形態がマッチしていることが大きかったです」とShailesh Naik氏は話す。資本提携後は、クレジット分野における展開でも協力できないかと考えているそうだ。
クレディセゾンからMatchMoveに出向しているビジネス・デベロップメント・アソシエイト 金子可林氏によると、「クレディセゾンは、ベトナムのHo Chi Minh Development Joint Stock Bank.(HD Bank)と提携しましたが、MatchMoveも並行して同行と提携しており、今後も両社で協力し合う予定」となっているそうだ。
将来的な目標としては、「5年以内にはビリオンダラー(10億ドル)カンパニーになることです。5年以内に1億人使えば、1人が1年で10ドル使用した時点で売上が達成できます」とShailesh Naik氏は意気込みを見せる。現在100社を超える提携候補先と交渉しており、このような実績を積み重ねれば、目標の達成は近づくとみている。
MatchMoveとの提携により各国での事業参入を加速
~クレディセゾン
クレディセゾンは、海外事業の強化を経営戦略に掲げ、中国、ベトナム、インドネシア、シンガポールに拠点を設けている。東南アジアでは、MatchMoveとの提携を通じて、各国での事業参入を加速させていきたいとしている。クレディセゾン・アジアパシフック ビジネス・デベロップメント・マネージャー 多田穣氏は、「まずはプリペイドカードや個品割賦のビジネスからスタートし、将来的には、銀行の先の小売業者と一緒に店舗独自の決済サービスを提供することも考えています」と強調する。現状の重点地域は、ベトナム、インドネシア、シンガポールとなっており、今後はタイ、フィリピン、マレーシアにも拠点を設けていきたいとしている。