2016年10月27日13:11
イギリスやフランス、オーストラリアなどでは、EMV化によりカード偽造によるカード不正を大きく減少させることができた。その一方で、クレジットカードやデビットカードといったペイメントカードを提示しないで行われるオンラインや通信販売のCNP(Card Not Present)カード不正が増大している。日本でもCNPのカード不正被害は、数字に表れない部分も含め、拡大していると思われる。
(図表)は、EMV化をほぼ100%成し遂げたSEPAを含むヨーロッパとオーストラリア、カナダと当時EMV化が手つかずのアメリカのカード不正におけるCNPとCPのシェアを比較したものである。ヨーロッパとオーストラリア、カナダでは、EMV化の達成に伴い、カード犯罪者の集団はカード番号の盗用で得た情報をEMV化がなされていないアメリカなどの国、オンラインペイメントなどのCNP(Card Not Present)カード不正に振り向けているのがわかるだろう。
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ヨーロッパ (2013年) |
オーストラリア (2013年) |
カナダ (2013年) |
アメリカ (2012年) |
CNP |
66% |
72% |
61% |
40% |
CP(POS&ATM) |
34% |
28% |
39% |
60% |
偽造・スキミング |
15% |
12% |
29% |
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紛失・盗難 |
15% |
11% |
5% |
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カード未着 |
1% |
3% |
1% |
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不正申し込み |
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1% |
2% |
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その他 |
3% |
1% |
2% |
(図表)カード不正におけるCNPとCPのシェア(欧州中央銀行、2015年7月)
CP(POS&ATM)における偽造・スキミングのカード不正は、ヨーロッパが15%とオーストラリアが12%に対して、カナダは29%と高い。EMV化を成し遂げた国やエリアでは、ほぼ国内における偽造による不正の抑え込みに成功しているものの、海外絡みのカード不正が残っている。カナダが29%とヨーロッパの15%やオーストラリアの12%に比べて、その割合が今なお高いのは、当時全くEMV化に手を付けていなかった隣国アメリカの存在であることは疑いが無い。
今後は米国でEMV化が進めば、大型加盟店の対応が遅れる日本にCPでの犯罪者の目が向けられる可能性もある。また、CNPでも日本では、海外発行カードを利用して、転送会社を経由しての不正など、独自の発送スタイルがあるため、犯罪者の足が掴みにくくなっている。今後は、国内のECサイトでも商品発送前の内容確認、CAFIS BrainやRed Shieldといったフラウドサービスの導入、3-Dセキュアの対応など、さらなるセキュリティ対策が求められるだろう。