2018年8月10日8:35
岐阜県の飛騨・高山地域を拠点とする信用組合である飛騨信用組合は、2018年8月9日に記者説明会を開催し、中国のアント フィナンシャル サービスグループが提供するモバイルおよびオンライン決済プラットフォーム「Alipay(支付宝:アリペイ)」 と連携し、同地で共通のQRコードを利用した事業を連携して進めていくと発表した。飛騨信用組合は、Alipayのアクワイアラ(加盟店開拓会社)として、加盟店の獲得と業務フォローを行うとともに、スマートフォンアプリ上で利用できる地域通貨「さるぼぼコイン」とAlipayどちらでも利用できるQR コードスタンドを、同地の店舗や観光施設などに設置していく。
電子地域通貨「さるぼぼコイン」は順調に拡大
全国の信用組合初、Alipayと直接アクワイアリング契約を締結
飛騨信用組合は、2017年12月から、高山市・飛騨市・白川村限定の電子地域通貨「さるぼぼコイン」を展開している。飛騨信用組合 理事長 大原誠氏は、「加盟店は700を超え、利用者4,800名、3億5,000万円と順調に利用シーンやユーザーが拡大しており、最新の決済スキームが普段使いとして定着しつつあり、全国からも注目を浴びています」と、導入の成果を述べる。
飛騨信用組合は、中国からの観光客がキャッシュレス決済できる環境を整備、推進していくため、全国の信用組合で初めて、Alipayと直接アクワイアリング契約を締結した。これにより、「さるぼぼコイン」とAlipayの両決済が利用できるQR コードスタンドを、同地の店舗や観光施設などに設置していくこととなった。
「静的QRコード」を利用している点が共通
2つの決済のQRコードを一本化する仕組みを導入予定
さるぼぼコインとAlipayは、スマートフォンの専用アプリで店舗に設置された QR コードを読み込む「静的QRコード」を利用している点が共通している。QRコードをユーザーのスマホで読み取って、店員が確認して決済を行う店舗オペレーションも同様のものだ。
Alipayの静的QRコード決済は、浅草の人力車など一部のシーンで採用されているが、「国内でもそれほど例がなく、さるぼぼコインでのオペレーションも浸透していることから、Alipayとの親和性が高いことから、業務提携が実現しました」と、飛騨信用組合 常務理事 総務部長 古里圭史氏は説明する。
現在、Alipayの加盟店は国内で約5万店。その多くが決済端末やタブレット端末を利用したものとなっており、静的QRコードが面的に特定の地域で広がる国内初のケースとなる。サービス開始当初は、2つの決済のQRコードが印刷されるが、今後はQRコードを一本化し、各決済によって振り分ける仕組みを導入する予定だ。
静的QRコードの活用により、店舗の導入費用は不要。また、外国人観光客との現金授受のストレスを、顧客、加盟店双方が軽減できる。さらに、さるぼぼコインやAlipay決済が浸透すれば、現金管理のリスク、コストを低減可能だ。
Alipay 発行者であるアントフィナンシャルでは、Alipayアプリでのクーポン発券や中国観光客向けのプラットフォームでの「飛騨・高山」特集等 により、中国からの観光誘客をサポートする。また、店舗には、QRコードをスキャンできるだけで入手できるクーポン「ラッキーマネー(ホンバオマ)」を設置して、同地での販促を行うことも想定している。ラッキーマネーは、ゲーム感覚で楽しめるクーポンとなっており、中国で人気のプロモーション手法だ。
10月の高山祭までに400店舗への導入を目指す
琉球銀行と提携して店舗にキャッシュレス環境を整備
日本政府観光局(JNTO)によると、2017年のインバウンド旅行者は約2,900万人。そのうちの約26%となる、約750万人が中国人観光客だ。また、4.4兆円の消費のうち、1.7兆円が中国人観光客の消費となっている。高山地域では、51万人のインバウンド旅行者が訪れるが、そのうち中国人観光客は7%と国内の平均を下回る。古里氏は、「7%を26%に引き上げれば、13.3万人が来てくださるポテンシャルを持っています」と話す。
Alipayは9月から店舗への導入を順次開始。店舗が支払う決済手数料は約3%を想定。また、店舗への入金は毎月3回行われる。10月の高山祭には数多くの観光客が訪れるため、まずは400店舗への導入を目指す。
なお、飛騨信用組合では、飛騨・高山地域での訪日外国人や地域の人々の利便性向上に向け、琉球銀行とVisa、Mastercard、電子マネーのアクワイアリング事業を提携してスタートしている。今後は、Alipayに加え、WeChat Payへの対応も視野に入れる。