2019年2月22日6:30
半導体サプライヤーのNXPセミコンダクターズは、非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」を展開するフェリカネットワークス(東京)と協力し、「FeliCa」機能を搭載したモバイル決済やチケッティングのエコシステムを強化する。2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪万博など世界的なイベント効果でインバウンド(訪日外国人観光客)のさらなる増加が予想される中、手持ちのスマートフォンで日本国内の「FeliCa」サービスを使えるようになるソリューションの拡大を目指す。(ライター:小島清利)
FeliCa機能、EMVCo、MIFAREを統合、サポート
NXPセミコンダクターズの新しいグローバルプラットフォームベース・ソリューションである「PN81」シリーズは、FeliCa機能とクレジットカードの国際ブランドが展開する「EMVCo」、NFC(近距離無線通信)対応のPOS端末やスマートフォンに採用されているモバイル・トランジット向け「MIFARE」を1つのソリューションで統合し、サポートしているのが特徴。スマートフォンなどのモバイル機器による日本国内外での便利なモバイル決済とともに、モバイル・チケッティング、入退出管理、ポイント・プログラムなどの機能が可能になる。
NXPジャパン 第二事業本部マーケティング・市場開発統括部長の山本尚氏は「NXPの新ソリューションは2020年以降の世界的なイベントに先駆けて、世界の旅行者にモバイル決済の利便性を提供する。このソリューションにより、訪日旅行者は自身の所有する携帯電話で日本でのモバイル・トランザクションを可能にする一方で、日本の消費者による日本国内外でのモバイル・トランザクションも可能にする」と話す。
東京五輪では、混雑や長い行列の解消のほか、旅行者の利便性向上のための手段が求められている。NXP上席副社長兼セキュア・トランザクション&アイデンティフィケーション事業部ゼネラル・マネージャーのラファエル・ソトマイヤー氏は「グローバルプラットフォームなどの世界的セキュリティ標準をサポートするNXPのFeliCa対応PN81シリーズは、近距離無線通信(NFC)や、組み込みセキュア・エレメント(eSE)技術により、セキュアでシームレスなトランザクションの可能性を拓くとともに、多くの人々に利便性をもたらすアプリケーションへのアクセスを実現する」とのコメントを発表した。
海外スマホメーカーの日本市場戦略に効果的
海外のスマートフォンのメーカーがNXPの新ソリューションを採用すれば、ユーザーが旅行やビジネスなどで日本国内を訪れた場合、「おサイフケータイ」などのFeliCa機能をスムーズに使うことができる。これまで、OEM企業は、日本市場向けのNFC・組み込みセキュア・エレメント(eSE)ソリューションを使用しており、デバイスの世界的互換性には制約が生じていた。
「PN81」世代をはじめとするNXPのソリューションは、FeliCaとの互換性を統合していることから、スマートフォンやウェアラブル端末のOEM企業は国境や地域的なネットワークを越えて同一の「NFC / eSEコンポーネント」を使用できるようになる。新ソリューションは、EMVCo、MIFARE、FeliCaをサポートしているため、日本市場向け端末だけにFeliCa機能をサポートする手間が省ける。
山本氏は「日本の消費者にとっても、世界的なNFCアプリケーションの利用の道が拓かれるとともに、世界の旅行者にとって、自身のデバイスによるFeliCa決済やチケッティング・サービスを安全に利用することが可能になる」と話す。
NXPとFeliCaの連携で、アジア市場でのプレゼンス高める
一方、フェリカネットワークスの疋田智治社長は、「フェリカネットワークスとNXPは、2020年以降に向けて、海外からの旅行者と日本の携帯電話ユーザーに対して、決済、交通やその他の用途での統合的な非接触型サービス体験の提供を目指す。NXPのPN81シリーズは、2018年に開始された『Mobile FeliCa Chipset Certification Program』により認証を受けた初のチップセットで、セキュリティ、実用性、性能の向上に向けたフェリカネットワークスのモバイルFeliCaプラットフォーム・ソリューションの継続的な進化をサポートする」とのコメントを発表した。
今回のNXPとフェリカネットワークスの連携は、進化するモバイル・ライフスタイルをサポートするNXPの数々の戦略的提携の一環。NXPにとっては、フェリカネットワークスとの協力はアジアでのモバイル決済とチケッティングにおけるNXPの強いリーダーシップと高いプレゼンスを証明する狙いだ。