2010年4月18日 21:14
大幅な修正なくPCI DSS Ver.1.2に準拠
今後は加盟店への支援も積極的に実施
主力サービスの「e-SCOTT」をはじめインターネット上のクレジット決済代行サービスなどの決済ソリューションを提供しているスマートリンクネットワーク。自社サービスにおけるPCI DSS準拠はもちろん、加盟店を含めた業界全体のセキュリティ強化に力を注いでいる。
詳細な事前書類の提示など
システム対応より人的コストが増大
「今回、PCI DSS Ver.1.2の審査にあたり、特にシステム部分で大きく手をいれた部分はありません」と語る経営企画部門 経営企画部 経営企画課・菅沼麻樹氏。スマートリンクネットワークでは2006年度末に初めてビザ・ワールドワイドのセキュリティ監査プログラム「AIS」に準拠をし、早くからPCI DSS対応に取り組んでいたため、Ver.1.2の審査の際も大きな作業は発生しなかったという。審査実施は9月末、前回同様の審査機関に依頼した。
「どちらかというと、システムよりも人的コストの費用がかさんだという印象が強いです。要件11のペネトレーションテストに時間を割いたのはもちろん、今回は事前の提出書類がVer.1.1の審査時より詳細なものを要求され、そうした作業に多くのコストがかかりました」(菅沼氏)
同社の主力サービスはクレジットカード決済代行サービス「e-SCOTT」。PCI DSSで要求される基準の中で実施にあたって比較的負荷の高いものは、脆弱性診断、ペネトレーションテストの実施、センター施設における監視カメラの導入などになる。しかしこれらに関してもVer.1.1以降の運用に関して特に指摘を受けた部分はなかった。
今後、新規のサービス開始時には
構築、運用ともにPCI DSSを意識
要件5のアンチウイルスソフトウエアについては、同社がノンストップサーバによる特殊な環境化での開発を行っているため、厳密には要件に合致しない。また、要件3.4の暗号キーに関しては、アクセス・コントロールという形で認証を受けた。
菅沼氏は「厳密に実装を求められる箇所もありますが、逆に文言どおりでなくても要件の背景にある本来の要求を満たしていれば、代替コントロールということでクリアできることも多い。そのため、弊社としては、PCI DSS審査のために何かを対応させるという意識はあまりないのです。もちろん、今後新しいシステムを組む場合には、PCI DSS基準を意識したシステム構築を行っていかなければなりません。イニシャルコスト、運営コストともに今までよりは負担が増えるでしょうが、それはセキュリティを守るための必要なコストだと思っています」と言う。
ちなみに同社ではISMS認証も取得の予定で、審査範囲や項目が重複するところもあるためPCI DSSと同時期に審査を行うことを考えている。
加盟店の関心の高まりをうけて
準拠支援サービスを開始
e-SCOTTには多くの加盟店や決済代行事業者がつながっており、カード情報を保持しているところが多い。そのため、同社では今後、加盟店におけるPCI DSS準拠支援に力を注いでいきたいと考えている。
「2009年9月から、加盟店様向けの準拠支援サービスを開始しました。そのご説明も兼ねてPCI DSSセミナーを数回実施したのですが、想像を大きく超える出席がありました。レベル1加盟店だけではなく、レベル2、レベル3の加盟店さんの参加もありましたし、セミナー後の質疑応答でもさまざまな質問が出ました。最近、カード情報の漏洩問題などが続いたこともあり、業界全体としてかなり危機感が高まっている様子が見て取れました」(菅沼氏)
提供する決済システムにも変化が出始めている。同社が提供しているシステムは、①従来どおり加盟店側にカード情報が残るもの、②いったん加盟店でカード情報を受けるが、その後履歴が残らないもの、③加盟店のサーバをカード情報が経由しないもの、の3種類。これまでは加盟店に選択を委ねていたが、最近ではなるべく加盟店にカード情報が残らないものを勧めるようにしているという。
「加盟店様のカード情報非保持は、カード情報の漏洩リスクは軽減できるものの、システム構築、カード会社やお客様対応のオペレーションともに複雑になるので、どうしても価格が高くなってしまいます。今までは決済システムは効率が重視され、早くて低コストのものに注目が集まりましたが、これからは、セキュリティがより重要視されるようになると思っています」(菅沼氏)
新規だけでなく、既存顧客からの問い合わせも増えているということから、その流れは一時的なものではないと同社では見ている。