2021年4月13日8:00
インバウンド含む5種類の決済アプリで開始、乗客の利便性向上へ
北海道中南部、十勝地方を走る北海道拓殖バスは2020年12月から、一般路線バス全線で、スマートフォンなどのQRコード・バーコードを利用したキャッシュレス決済を導入した。乗客が降車時にスマホ画面に表示したQRコードを運賃箱の読み取り機にかざすと、乗車料金が精算されるCPM方式(Consumer Presented Mode)で、同社によると、全国のバス事業者の一般路線バスでは例がない取り組みだという。
バス40台でキャッシュレス決済
整理券から乗車データを取得
北海道拓殖バスは1961年、北海道拓殖鉄道からバス部門を分社してスタートした。「拓バス」の愛称で親しまれ、沿線住民や十勝地方を訪れる観光客の重要な足となっている。
同社は、運賃のスムーズな支払いを実現して乗客の利便性を向上し、誤精算を減らそうと、一般路線を走るバス40台でQRコード・バーコード決済を導入した。3大キャリアの「PayPay」「au PAY」「d払い」に加え、中国系の「Alipay」「WeChat Pay」と計5種類の決済アプリに対応している。
使い方はこうだ。乗客が乗車時に受け取った整理券を、降車時に運賃箱に入れると、モニターに運賃額が表示される。そこで利用する決済アプリのQRコード・バーコードをスマホ画面に表示させて運賃箱の読み取り機にかざすと、運賃が決済される。乗客はバスに設置したQRコードを読み取ったり、金額を入力したりする必要はない。
同社は運賃箱の更新のタイミングでこの決済方法を導入。事業費は約8,000万円で、そのうち3分の1は国の補助金を活用した。
運賃箱更新でQRコード決済を導入
CPM方式で誤精算の可能性を低下
キャッシュレス決済を導入した他のバス事業者では、乗客がバス車内などに掲示したQRコードを読み取り、自分で運賃を入力するMPM方式(Merchant Presented Mode)を採用しているケースが多い。なぜ北海道拓殖バスではCPM方式を選んだのか。
同社の業務部長 小森明仁氏によると、もともとは3年ほど前に、JRグループなどが提供しているようなICカードの導入を検討していたという。周辺のバス会社では、電子マネーを利用した支払い方法も始めていた。ただ、ICカードの導入にはコストがかかり、地方のバス会社にとって、バスを利用してもらうために乗客にICカードを持ってもらうのもハードルが高かったそうだ。
そんな時に、今回のQR決済端末を手がけた一水製作所とのやり取りの中で「QRコード決済端末を搭載した運賃箱を作れないか」という構想が浮かんだ。ちょうどバスの運賃箱を更新する必要があったためだ。運賃箱を製作する小田原機器と一水製作所の協力も得られたため、運賃箱の開発が動き出した。決済処理は、インコム・ジャパンの協力を得ている。
CPM方式を採用したのは、運賃の誤精算をなくす方法を考えた時に、乗務員と乗客、双方にとってメリットがあったからだ。これまでの乗客が乗車時の整理券の番号で運賃額を確認し、現金で支払う仕組みだと、定期券を利用して乗り越した際や、複数の人数分をまとめて支払う際などに、適正な運賃が支払われずに、乗務員がストレスを感じるケースがあった。また、他の事業者が導入しているMPM方式だと、乗客がバスに設置したQRコードを読み取り、運賃額を入力して支払うため、金額を間違える可能性も出てくる。
運賃箱で整理券のバーコードを読み取って金額を確認し、乗客が示したQRコードで決済する仕組みだと、誤精算の可能性は低くなるし、乗務員のストレスも減る。小森氏は「運賃箱の費用の問題もありましたが、機能によってはある程度国の補助金が得られる見込みがありましたので、(コード決済の)導入に踏み切りました」と話す。
今後は1割以上の利用を目指す
QRコード決済の可能性に期待
同社によると、2021年2月現在、全利用者に対する割合としては数%だが、少しずつQRコード決済を利用する人が増えている。
「乗って新たに始めるお客様もいらっしゃるでしょうし、バスでこんなことができるのかと驚く方もいらっしゃると思います。(全利用者の)1割以上にはシェアを増やしていきたいです」(小森氏)
QRコード決済についての期待は大きい。例えば旅行者なら、手軽に使え、手持ちの現金を残せるメリットがある。中国系の決済アプリにも対応しているため、今後、インバウンド需要が戻れば、運賃支払いの際の乗務員の負担を減らすこともできる。
将来的には、何かの記念や節目のタイミングで、運賃の何%かをポイントで還元する企画や、キャリアの販促キャンペーンとの連携なども検討していくという。小森氏は「今後もサービスを充実させたいと考えていますので、QRコード決済がより(多くの人に)広まってほしいです」と話した。
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