ギャンブル等の「等」(IR法)のキャッシュレス化を考える(そのⅠ)(デジタルペイメント・マーケティングを編む)

2021年8月25日8:30

決済ビジネスに長らく携わってきたカード戦略研究所のコラム。今回は中村敬一氏にギャンブル等の「等」(IR法)のキャッシュレス化について説明してもらった。

カード戦略研究所 中村敬一

すでに公営競技・宝くじでは、クレジットカードや口座振替等によるキャッシュレス化が進んでいる。特に競馬・競輪等ではネットで馬券・車券の購入が、今般のコロナ禍で発売場での現金購入の代替として大きな役割を果たしている。

ギャンブル等の「等」にあたるパチンコ業界ではどうか、もちろん両者を対等に比較して論じることはできないが、ホールに人が行ってゲームにいそしむパチンコの場合は、公営競技と違いネットを通じて遊技をすることはできない構造上の特徴がある。

※画像(筆者提供)

パチンコ遊技のキャッシュレス化の現状

多くのホールでは、座ったまま左上部にある現金挿入口に千円単位で上限1万円までのお札を挿入して、その分の遊技玉を500円・千円単位で払い出し遊技にいそしむ方式が一般的である。

この方式の場合は、形式は類似しているが、資金決済法の前払い支払い手段として登録されたカードタイプと、未登録(当日精算など法の適用除外)のカードタイプがある。前者は金融庁に発行金額、回収金額などを報告するが、後者はされていないため、金融庁が毎年発表している「前払支払手段の発行額等の推移」で記載される年間発行額には反映されていない。

その他一部でJデビットカードも採用されているが、パチンコ業界全体の%に影響を与えるほどの規模にはなっておらず、パチンコ業界のキャッシュレス化は40%~50%(上記同法の解釈上)とみることができる。もし全体をキャッシュレス化すれば20兆円前後の数値になり、そのままにすればキャッシュレス化のブラックボックスになってしまう可能性がある。

インのクリアとキャッシュレス化

インのクリアとは遊戯料金(売上)の透明化を指す。旧来型のパチンコ・パチスロでは直接現金を投下して遊技が行われため、売上は必ずしも透明化されていなかった。しかしこの現金と遊技の間にクリアシステムを介在させて、売上データを第三者のセンターに登録すれば、売上が客観的に管理されることが可能になる。

現状では、第三者のプリペイドカード会社(第三者型)を介在して、決済情報が第三者決済として担保されているカードシステムと、決済情報・玉数情報を第三者の情報センターに登録して情報の真贋性を担保するクリアシステム、決済情報はあくまでホール内で管理する方式で、運用会社が専用の遊技カードシステムとして提供するものに分かれている。

その意味で、パチンコ業界のキャッシュレス化は、キャッシュレス化のためのキャッシュレス化ではなく、第一義はインのクリアにあることを抑えておく必要がある。

パチンコ・パチスロ機種攻略情報|DMMぱちタウンより

チャージとキャッシュレス化

上記で紹介したように、座席に座りながらお札を投入し、遊技単価によるが、都度200円から1千円の遊技を行う。これだけ見れば、どう見ても現金であり、キャッシュレスとは思われない。ただ、最初に1万円を投入したときに、チャージ行為として1万円が保留され、1万円全額使えば、プリペイド売り上げとなるのが前払式支払手段に登録された金額で、ただ未使用分は、当日精算するか、翌日以降も遊技カード(会員カード、ビジターカード)として持ち帰るかで、若干計上の仕方は変わってくる。

ただし、後者の場合は、同じように1万円をチャージするが、利用期限を当日限りとして(一部は6か月条項から一定期間利用できるような運用もある)未使用残額の返却も同様にしているケースが多い。この場合のチャージは、金融庁等に届ける義務(適用場外)もないため、現金としてカウントされている。

ここで、キャッシュレス化を進めようとした場合に、両者ともに現金が介在して、投入するチャージとなるため、本来のキャッシュレスといえるのかという疑問が残る。

ただこれはパチンコ業界だけに限らず、多くの電子マネーやPayPayなどのQRコード決済も、同様な現金チャージ方式が見られる。IDや口座未登録を支持する消費者にとっては現金チャージは不可欠な手段である。

この現金チャージをどう見るのか。キャッシュレス化を純粋に見れば、現金チャージをキャッシュレス化の範疇に入れるのには躊躇がある。少なくとも人間の手に現金が渡らずに決済できなければ、キャッシュレス社会と表現するのは憚れる。

少なくともクレジットカードによるショッピングや、デビットカードの口座決済のように、現金が消費者の手に触れない手段が、電子マネーなどにも求められる。

ただ、この判断は現段階では現実的な判断ではない。店頭で残額が足りない場合に追加で現金チャージする機能をなくしたら、店頭は混乱する。不足分を現金払いするのもキャッシュレス化の時短効率化を妨げることにもなるが、利用する消費者は少なくないはずだ。

これらの現金チャージ機能をなくせば、電子マネーの利用は確実に少なくなり、売上にも影響することになろう。消費者も不便さを感じることになる。

パチンコ業界でも、残額が少なくなったカードに、座ったままチャージできる利便性を、敢えて、一度離席させて、他のチャージ機でチャージさせることは、ホールにも利用者にも何のメリットもなく、誰も支持しないであろう。

オートチャージ等技術の進化の活用

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