2022年3月29日9:00
テュフズードは全世界に1,000以上の拠点を持つグローバルに活動する企業であり、パートナー企業もまた世界中に拠点を置いている。とりわけ決済関連の事業においては欧州にパートナー企業があり、彼らと緊密に連絡を取りならが各種の協業を行っている。本稿では欧州のパートナー企業の中から、セキュリティ分野のラボであるSRC Security Research & Consulting GmbHのBenjamin Botermann氏 および Dagmar Schoppe氏が昨年末に投稿したスマートコントラクトについての記事を紹介する。今回はその後編となる。前編については(リンク)を参照頂きたい。
記事のポイント!
①分散元帳技術・暗号通貨の規制の枠組みはまだ確定していないのが実情
②多くの金融機関は身動きせず
③各機関による協力体制と技能の強化は不可欠
④協力や提携をする複数のメリット
⑤銀行の発展やデジタル化進展につながる可能性を秘める
材料が出そろうのを待たずに動き出す必要性
例えば、EU圏内で現時点で法規制の対象外となっている暗号資産を規制する枠組みである「Markets in Crypto-Assets」(MiCA)を2022年末までの施行を目指すとされていたが、まだ承認プロセス中であることが示すように、分散元帳技術や暗号通貨に関する規制の枠組みはまだ確定していないのが実情だ。また、デジタルユーロがどのような技術によって、どのようにプログラムされるのかもまだ明らかになっていない。とはいえ、最終的な規制が明確になるまで待つというのは、間違った方法であろう。スマートコントラクトに関して規制はあくまで一つの側面に過ぎず、規制を遵守するだけでは十分ではない。スキル、技術要件、専門知識も必要であり、組織としての新しい技能を構築していくには時間がかかる。現時点での法規制面の不確実性、標準化がされていない問題、ブロックチェーン技術自体の未熟さといった外部要因以上に、実際のところ銀行業界は自らのリソースの不足を懸念している。ドイツのBitkom(ドイツIT産業協会)が最近行ったブロックチェーン技術に関する調査では、回答企業の85%が有資格者の不足を、91%が専門知識の不足をブロックチェーン導入の課題として挙げている。
コアコンピタンスの構築―優位性の確立
先に取り上げたドイツ銀行協会のポジションペーパーの名称が『ベンチャーアウト』であることは、まさにリスクを取って外にでなければならない現在の状況を表している。しかしながら、現実には多くの金融機関は身動きが取れなくなっているように見える。
金融機関は今こそ自分たちの特性を再度見直して、戦略的に活用を始めるときだ。金融機関の特性の中には、顧客とのこれまでのビジネスや、法規制を満たすための長年の経験も含まれている。金融業界には法令順守のプロセスが当たり前に根付いているが、新興のフィンテックにとっては、こういった法規制への対応が新しいチャレンジになる。そして既存金融機関の最も大きな優位性は、「信頼されている」ことである。デジタルユーロであれ、現物のユーロであれ、銀行の真の通貨と言えるものは、機関投資家や各個人が銀行に寄せる信頼であると言える。この「信頼されている」という立ち位置は、デジタル通貨の世界でも優位性として力を発揮する源となりえる。分散元帳技術のように非中央集権的な環境であっても、最高レベルのセキュリティと信頼を必要とするサービスは不可欠となる。例えば秘密鍵の管理はどうだろう。ユーザーは自分の暗号資産や取引にアクセスするために、秘密暗号鍵を必要とする。信頼できる金融機関等以外に、誰がこのサービスに適しているだろうか。実際多くの金融機関がすでに他の用途で暗号鍵を使用しているため、必要な技術設備もすでに備えている。
2020年初頭、暗号管理は新たな金融サービスとしてドイツの銀行法に組み込まれた。ドイツの銀行は、ライセンス手続きを通じて暗号管理の資格を得ることができる。
協力体制と技能を強化する
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