2023年8月30日8:10
福島県石川郡玉川村は、指静脈認証による「手ぶらキャッシュレス実証事業」の第二弾を2023年7月30日~2024年1月12日まで行っている。今後は顔認証決済への対応、公共・民間施設での利用など対象範囲を拡大させ、手ぶら認証によるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進により、住民の利便性向上や地域活性化といったQoL(生活の質)向上につなげていく方針だ。
指静脈認証で財布もスマホも不要に
2本の指を登録して認証率を高める
実験には玉川村のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラックストアなど約20店舗が参加。利用者は事前に2本の指静脈情報を事前登録することで、村内の協力店舗にて専用端末に手をかざすと玉川村のデジタル地域商品券が利用可能だ。
玉川村で使われている指静脈認証は、日立製作所(日立)の生体認証技術「PBI」を用いて、生体情報を復元できない形式にしてクラウド上に登録する。そのため、生体情報そのもののデータはシステム内のどこにも保存されない。利用者は2本の指を登録しており、仮に1本が認証できない場合でも別の指を使うことで、認識率を高めている。これまでの実験ではほぼ問題なく認証できているそうだ。
地域全体でのデジタル化、DX化を目指す
手ぶらキャッシュレスへの抵抗は少ない?
玉川村は、福島県南部に位置する人口約6,500人の村だが、2020年にデジタル技術を活用した新たな事業の創出と、それによる地域振興への取り組みを開始した。行政に加え、地域全体でのデジタル化、DX化を目指している。
2022年3月29日には、日立、NTTデータ、三菱HCキャピタルと玉川村におけるまちづくり、産業、教育、環境、防災、観光などさまざまな分野でのデジタル化推進に向けて、相互に協力する連携協定を締結した。その連携事業の第一弾として、2022年度に全国初となる生体認証での「手ぶらキャッシュレス実証事業」を実施。プレミアの付いたデジタル地域商品券を販売し、10店舗の協力を得て、村民など約500名が参加したが、老若男女問わず利用され、肯定的な意見が多かった。紙の商品券の場合、お釣りが出ないことも多いが、1円単位で使えることも好評だった。玉川村 企画政策課 課長補佐兼企画調整係長兼情報推進係長 添田孝則氏は「指静脈については抵抗なく利用されました。全国初となる取り組みとして、他の自治体からの視察も多かったです」と成果を述べる。
今年度の実験では、利用者、協力店舗、玉川村からの前回アンケート結果をもとにユーザビリティを改善し、スマートフォンからの事前登録機能など新機能を追加した。新規登録者はチラシなどの二次元コードからポータルサイトにアクセスし、利用者情報とクレジットカード情報を登録する。デジタル地域商品券の購入は2万円までの購入金額の30%がプレミアムとして付与される。玉川村役場では上記期間に生体情報の利用登録を実施。利用者は、生体情報を登録すると協力店舗での手ぶらキャッシュレスが可能だ。生体情報は5年間保持しており、昨年度の実験に参加した人は指静脈認証をすでに登録しているため、ポータルサイトで商品券を購入すれば協力店でキャッシュレス決済が可能となる。
「手ぶらキャッシュレス実証事業」は9月15日まで申し込みを受け付けており、玉川村以外の人も参加可能だ。定員は750名となり、8月22日現在500名ほどが登録している。昨年度は村内の人の登録が約6割を占めたが、今年度は現状、約5割が村外からの登録となっている。
「マイナンバーカードによる身元確認」を試験導入
コワーキングスペースや村役場で顔認証活用
なお、商品券はクレジットカードで購入する必要がある。添田氏は「地域振興の一助になる商品券ですが、現金をどこで受け取るかという議論はありました。各世帯でまったくお持ちではない人はいないほど普及しているとみています」と話す。
今年度の新たな取り組みとして、希望者には指静脈の登録時、公的個人認証サービスを通じた「マイナンバーカードによる身元確認」を試験導入した。これにより、氏名・住所など基本四情報の自動入力が可能となった。
さらに決済以外の活用も開始。玉川村のコワーキングスペース「すがまプラザ交流センター」では、本人認証を顔認証で行う予定だ。利用者は事前にスマートフォンから顔写真を登録すると、コワーキングスペースでは顔認証で受付ができ、手ぶらで施設の利用が可能だ。さらに、今後の本格的な住民へのサービス適用に向けた実証の1つとして、玉川村役場職員の勤怠管理を顔認証で実施する。
次年度はエリアを広げ顔認証決済を検証
生体認証のさまざまな可能性を探る
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