2024年6月21日9:06
日立製作所(以下、日立)では、2010年より生体認証のクラウドサービス商用化を行っている。同社では、生体情報を復元不可能な形に変換し、「公開鍵」として安全に利用することで、プライバシーの保護と高度なセキュリティを両立する生体認証基盤「公開型生体認証基盤(PBI:Public Biometric Infrastructure)」を開発。指静脈認証装置とPBIを組み合わせて、高い認証精度と認証速度の両立を大規模利用でも実現しているそうだ。決済領域でも活用が広がる日立の生体認証技術の強み、取り組みの成果、今後の展開について、説明してもらった。
池谷貴
セキュリティ技術PBIが強みに
指静脈に加え顔認証にも対応へ
日立のPBIは、飲食店での決済やゴルフ場の受付、ワクチン接種証明の本人確認、地域商品券の利用・決済など、幅広い領域や用途で活用が進められているそうだ。
日立の直近2年の決済やポイント関連の生体認証分野の取り組みとして、2022年3月に福島県玉川村とNTTデータ、三菱HCキャピタルとデジタル化推進に向けた連携協定を締結。2022年7月には指静脈認証技術を活用した「手ぶらキャッシュレス実証事業」を玉川村で開始した。2023年7月には、「手ぶらキャッシュレス実証事業」の第二弾を玉川村で実施している。
2022年6月からは、ANA Digital Gate、ジー・プランと、生体認証とマイル・ポイントを組み合わせたスマートチェックインサービス共同実証実験を実施した。2023年3月からは、ANA Digital Gate、全日空商事、ANA FESTAとともに、対象店舗の来店時にマイルが貯まる「顔認証スタンプラリー」共同実証実験を行っている。
東急百貨店とは、東急百貨店本店、渋谷ヒカリエ ShinQs、+Q(プラスク)ビューティーの渋谷3店舗において、日立の小型無人店舗サービス「CO-URIBA(コウリバ)」を活用した新たな買い物体験を提供し、店舗間の送客・誘導につなげる実証実験を実施したが、生体認証による手ぶらでの入店も実施している。
東武鉄道とは、2024年4月11日から、指を専用装置にかざすだけで決済やポイント付与、年齢確認が実現できるセルフレジを、東武ストアの3店舗に設置している。なお、同取り組みについて、ジェーシービー(JCB)が生体認証を用いた決済のガイドライン策定への助言で参画している。
――長らくビジネスを展開されてきたが、市場への浸透には時間がかかる部分もある。貴社も2019年にユーシーカード、2021年にゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)などと連携してサービスを展開していたが、現在の成果についてはどう捉えているか?
日立:ユーシーカードについては有効性を検証し、すでに本番移行済みで、今後も活用範囲を広げていきます。GDOも同じく有用性を確認済みで、今後パートナーとの展開を広げていきます。
――コンペの際の競合優位性をどう捉えているか?
日立:セキュリティ技術PBIを武器に、生体情報の個人情報の扱いを優位性ポイントとして、推進しています。
――例えば決済や汎用のあるサービスの際、これまでは登録の手間などが課題だったが、その課題は解決されてきているか?
日立:課題のうち、特に指静脈の専用端末の扱いについて重要視していました。そのため、顔認証PBIでの専用端末を伴わない汎用端末での登録を可能としました。マーケットに適合できるマルチモーダルの1つのラインナップとして提供しております。
――手のひら静脈など、貴社製品の認識精度は大規模な運用に対応できるほど高まっているのか。また、生体認証では、国際ブランドなどと連携した動きも目立つ。ジェーシービー(JCB)とのルール決めの成果はいかがか?
日立:指静脈認証は、指一本の認証(H-1)と指三本の認証(C-1)の2種類があります。指一本に比べると三本の方が大人数での対応が容易で、今後は顧客のニーズや要望に応じた対応を進めていきます。
また、JCBの件については、現状アップデートとしてお伝えできることがございませんが、引き続き推進中です。
東武や玉川村での手ぶらキャッシュレスの成果は?
3つの軸を柱に展開を進める
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