2024年8月2日8:00

アメリカは銀行規制がヨーロッパなどと比較して緩やかで、新しい金融サービスの開発や提供がしやすい環境にあり、高度なテクノロジー力を有したFinTech企業やテクノロジー企業が盛んに活動している。2010年代後半から始まった新しい世代のエンベデッド・ファイナンスの分野においても、アメリカが世界を大きくリードしている。欧米のエンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance、組込金融)シリーズの第3回目は、2023年に刊行されたGVR社のエンベデッド・ファイナンスの調査レポートである『U.S. Embedded Finance Market』(110頁)などを参考に、アメリカのエンベデッド・ファイナンスのマーケットについてレポートしてみたい。

和田文明

■連載
1、エンベデッド・ファイナンスの歴史
2、エンベデッド・ファイナンスとFinTechとBaaS(Banking as a Service
3、アメリカのエンベデッド・ファイナンスは
4、エンベデッド・ファイナンスの三つの役割
5、Weavr(ウィーバー)のエンベデッドファイナンスクラウド

アメリカのエンベデッド・ファイナンスには、以下のような特徴がある。
・テクノロジー企業が主導
アメリカでは、FinTech企業やテクノロジー企業がエンベデッド・ファイナンスを主導
・多様なサービス
アメリカでは、すでにペイメント(決済・送金)、融資、投資など、さまざまな種類のエンベデッド・ファイナンスサービスが提供されている
・多様なプレイヤー
アメリカには、銀行、FinTech企業、テクノロジー企業など、さまざまなプレイヤーがエンベデッド・ファイナンス市場に参入している
BNPLBuy Now Pay Later)の普及
BNPLは、後払い決済サービスの一種で、アメリカのエンベデッド・ファイナンス市場で特に成長している分野である
APIApplication Programming Interface)の標準化
アメリカでは、APIの標準化が進み、異なるサービス間の連携が容易になっている
BaaSBanking as a Service)の普及
アメリカは、BaaS(Banking as a Service)が普及しており、ブランドの非金融事業者が銀行の機能を容易に利用できるようになっている
・銀行とFinTech企業のパートナーシップ
アメリカでは、ライセンスホルダーの銀行とイネーブラーのFinTech企業が、エンベデッド・ファイナンスサービスの提供においてパートナーシップを結ぶケースが増えている
・規制緩和
アメリカ政府は、エンベデッド・ファイナンスの発展の促進を図るため、規制環境の整備を進めている

(表)は、アメリカのエンベデッド・ファイナンスのマーケット規模(収益ベース)の推計値の2020年から2023年までの推移、並びに2030年のマーケット規模の予想値を示したものである。2020年度のアメリカのエンベデッド・ファイナンスの推計値(収益ベース)は69.6億ドル(約1兆440億円)で、2023年度153.6億ドル(約2兆3,040億円)とわずか3年間で2.2倍に拡大している。さらに、2030年度のマーケット規模(収益ベース)の予想値は1,038億ドル(約15兆5,700億円)へと拡大するものと予想している。

(表)アメリカのエンベデッド・ファイナンスの市場規模の推移(2020年~2023年)

年度

2020年

2021年

2022年

2023年

2030年

市場規模

69.6億ドル

91.0億ドル

121.8億ドル

153.6億ドル

1038億ドル

出典:U.S. Embedded Finance Market、GVR

アメリカのエンベデッド・ファイナンスにおける主な金融サービスは、ペイメント(決済・送金)、融資(POSファイナンス、BNPL)、保険、投資の4つの部門で、2023年それぞれの部門ごとのマーケット規模(収益ベース)(推計値)は、(表)の通りで、ペイメント部門が全体のおよそ50%を占め、次いでBNPLやPOSファイナンスなどの融資部門が25%を占めている。

(表)アメリカのエンベデッド・ファイナンスの市場規模(2023年度)

部門

2023年(推計値)

シェア

ペイメント

76.8億ドル(約1兆1,520億円)

50.0%

融資

38.4億ドル(約5,760億円)

25.0%

保険

18.4億ドル(約2,760億円)

12.0%

投資

20.0億ドル(約3,000億円)

13.0%

トータル

153.6億ドル(約2兆3,040億円)

100.0%

出典:U.S. Embedded Finance Market、GVR

(表)は、エンベデッド・ファイナンスのグローバルマーケット(収益ベース)に占めるアメリカのシェアを2022年度と2023年度の推計値、並びに2030年度の予想値で比較したものである。エンベデッド・ファイナンスのグローバルマーケット規模も2023年度(収益ベース)(推計値)は833.2億ドル(約12.5兆円)で、2030年度(予想値)5,885億ドル(約88.3兆円)で、2024年度から2030年度へのCAGR(年平均成長率)は32.2%もの高い伸びを予想している。

(表)エンベデッド・ファイナンスのグローバルマーケットに占めるアメリカのシェア

年度

2022年度

2023年度

2030年度

CAGR

アメリカ

121.8億ドル

153.6億ドル

1,038億ドル

32.0%

グローバル

654.6 億米ドル

833.2億ドル

5,885億ドル

32.2%

アメリカのシェア

18.6%

18.4%

17.6%

出典:U.S. Embedded Finance Market、GVR

2023年度のグローバルマーケット(収益ベース)に占めるアメリカのシェアの推計値は18.4%で、2030年度のアメリカのシェアの予想値は17.6%である。アメリカは、高いデジタル接続性とテクノロジーにより、今後もエンベデッド・ファイナンスの重要なマーケットとして成長が見込まれる。

このようにアメリカは世界でも進んでいるエンベデッド・ファイナンスのマーケットであるが、その背景には、次のような要因が挙げられる。

・高いテクノロジー
アメリカは、シリコンバレーをはじめとする技術革新の中心地であり、FinTech企業が多数存在している
・巨大な市場規模
アメリカは世界最大の経済大国であり、潜在的な顧客数は非常に大きい
・規制緩和
アメリカ政府は、金融サービスのイノベーションを促進するため、規制緩和を進めている

アメリカのエンベデッド・ファイナンスの主なトレンドは、次の通り。

このコンテンツは会員限定(有料)となっております。
詳細はこちらのページからご覧下さい。

すでにユーザー登録をされている方はログインをしてください。

関連記事

ペイメントニュース最新情報

ポータブル決済端末、オールインワン決済端末、スマート決済端末、新しい決済端末3製品をリリースしました(飛天ジャパン)

国内最大級のクレジットカード情報データベース(アイティーナビ)

「お金の流れを、もっと円(まる)く」決済ゲートウェイ事業のパイオニアとして、強固なシステムでキャッシュレス決済を次のステップへと推進します。(ネットスターズ)

国内最大級の導入実績を誇る決済代行事業者(GMOペイメントゲートウェイ)

決済シーンにdelight(ワクワク感)を!PCI P2PE 認定国内実績 No.1の「確かな信頼」を提供します(ルミーズ)
電子マネー、クレジット、QR・バーコード、共通ポイントなど、多数のキャッシュレス決済サービスをワンストップで提供(トランザクション・メディア・ネットワークス)
決済領域を起点に多様なビジネスニーズに応える各種ソリューションを提供(インフキュリオン)
ReD ShieldやSift等の不正検知サービスを提供し、お客様の不正対策を支援(スクデット)
BtoCもBtoBも。クレジットカード決済を導入するならSBIグループのゼウスへ。豊富な実績と高セキュリティなシステムで貴社をサポートいたします。(ゼウス)
TOPPANの決済ソリューションをご紹介(TOPPANデジタル)
多様な業界のニーズに対応した、さまざまなキャッシュレス・決済関連サービスを提供する総合決済プロバイダー(DGフィナンシャルテクノロジー)
決済業務の完全自動化を実現する「Appian」とクレジット基幹プラットフォームを合わせてご紹介!(エクサ)
チャージバック保証、不正検知・認証システムなどクレジットカード不正対策ソリューションを提供(アクル)

非対面業界唯一!!カード会社とダイレクト接続により、安心・安全・スピーディーで質の高い決済インフラサービスを提供。Eコマースの健全な発展に貢献する決済代行事業者(ソニーペイメントサービス)

stera terminalでお店のポイントがつけられる「VALUE GATE」(トリニティ)

Spayd スマートフォン、タブレットがクレジット決済端末に!(ネットムーブ)

DNPキャッシュレス 決済プラットフォームをご紹介(大日本印刷)

PAGE TOP