2024年12月23日8:30
おサイフケータイは2024年7月でサービス開始から20周年を迎えた。NTTドコモ 第一プロダクトデザイン部 セキュリティ基盤担当 佐藤理氏が、20年の歴史を総括し、今後の抱負を語る。
FeliCa搭載のAndroid端末で決済
機能や対応サービスを順次拡大
2004年7月に登場したおサイフケータイは、2024年7月に20周年を迎えた。おサイフケータイとは、非接触ICカード技術方式である「FeliCa」を搭載したAndroidスマートフォンを、店舗・施設の読み取り機(リーダライタ)にかざすことで、購入・利用代金の支払いができるモバイル決済サービスの総称。NFC Type A/B方式やiPhoneなどAndroid以外のスマートフォンによる決済は含まれない。
JR東日本の「モバイルSuica」やNTTドコモの「iD」などのアプリをダウンロードしたモバイル端末から、サービス事業者のサーバと通信を行うことで、残高確認やオンラインチャージが可能だ。物理的なカードでは実現できない便利な機能を提供し、おサイフケータイはサービス開始当初から脚光を浴びた。
サービス開始に先立って2003年12月から2004年6月に実施されたプレビューサービスでは、NECとソニーが対応機種を5,000台製造。27社が参加して各種サービスを提供した。2004年7月のスタート時点では対応する4機種が発売され、10社がサービス提供を開始した。2010年にはおサイフケータイ対応のスマートフォンを発売。2016年にはGoogle Payでのサービス提供を開始した。
対応サービスは2004年から2007年ぐらいまでに急拡大し、楽天Edy(旧Edy)、ヨドバシカメラ、JAL、iD、QUICPay、モバイルSuica、モバイルnanaco、WAONなどに対応。交通系では、2020年代に入り、モバイルPASMO、モバイルICOCAが加わって、利便性が向上している。
端末やアプリも時代に即して進化
iD会員数は5,000万人を突破
端末の観点から歴史を振り返ると、フィーチャーフォン(ガラケー)が全盛だった2004年当時は、モバイルFeliCa専用チップで情報を管理していた。2000年代後半から急速にスマートフォンへの移行が進み、2010年代後半にグローバル標準チップ搭載のおサイフケータイ対応スマートフォンが登場。これにより、端末メーカにとってのおサイフケータイ機能の実装負荷が軽減。さらなるサービス拡大や対応スマートフォンの増加に寄与することとなった。
一方、2004年当初、iモード機に搭載されていたICカード一覧アプリは、2010年スマートフォンでの提供開始以降、残高表示などの機能を実装したおサイフケータイ アプリへと移行した。2015年にはUI(ユーザーインターフェース)を刷新。プッシュ配信、かざして通知、IC残高読み取りなどの機能が追加された。2020年代にはさらにUIを刷新して、メインカード切り替えが可能になるなど進化を続けている。
電子マネー「iD」サービスの会員数は2008年12月に1,000万人、2018年9月に3,000万人、2023年9月に5,000万人を突破。加盟店端末の設置台数も着実に増加している。
プレイヤー各社とともに新しい試みに挑戦
将来は“かざさない”決済も
2004年7月10日以来、これまでに発売されたおサイフケータイ対応機は、KDDI、ソフトバンク、SIMフリー端末を含めて約1,250機種。今後も増えていく見込みだ。
その中から佐藤氏が思い出深く振り返るのは、やはり初号機である4機種だ。軽量化・小型化と、ディスプレイの大型化という相反する課題に取り組み、FeliCaチップやアンテナの配置位置にも各社が試行錯誤した。
また、2008年に発売されたらくらくホン。シニア向けで、高度な機能を搭載するのは難しいと思われていたが、搭載するとシニア世代がおサイフケータイを便利に使いこなすようになった。
初めて“前面かざし”を採用した2016年発売の「SO-04H」。設計上、FeliCaマーク(正式名称:モバイル非接触IC通信マーク)の印字もできなかったため、取扱説明書や別添の案内書で使い方の説明をしたが、「わかりにくい」「うまく反応しない」との声が多く寄せられた。日常利用する上でかざす位置や、かざす位置を示すマークがあることが重要で、その位置が少しでも変わると利用者や利用者からの問合せを受けるサービス事業者のコールセンターなどに大きな影響を及ぼすことを実感した1台だったと佐藤氏は振り返る。
おサイフケータイにまつわる種々の課題はキャリアだけで解決できないことも多く、佐藤氏は「端末メーカやサービス事業者、加盟店など、関係する皆さまを巻き込んで最適解を見出し、サービスに磨きをかけていきたい」と抱負を語る。
NTTドコモでは、デバイスをかざさなくても認証・決済が完了する、おサイフケータイのタッチレス対応という未来図を描く。また、近年普及が進むQRコード決済やタッチ決済など、おサイフケータイ以外の決済手段との共存が必要と考える。「モバイルキャッシュレス市場のリーダーとしての自覚と社会的責務を持って、より良いサービス提供に努めていきたい」(佐藤氏)としている。