2025年2月21日9:00
欧州のスマートカード(ICカード)と環境問題の第3回目は、環境問題に配慮した素材や製造プロセスを採用した“エコフレンドリーペイメントカード” (Eco Friendly Payment Card)について紹介してみたい。エコフレンドリーなペイメントカードとは、環境負荷を低減するためにさまざまな工夫が凝らされたペイメントカード(クレジットカード、デビットカードなど)のことである。
Index
(1)Smart Payment Association (SPA、スマートペイメント協会)
(2)スマートカードとモジュールの出荷状況について
(3)エコフレンドリーカードとは
(4)SPAのエコフレンドリーペイメントカード発行状況
(5)スマートカードとリサイクル
環境に優しいクレッジットカードやデビットカードといったペイメントカードである“エコフレンドリーペイメントカード”に対する消費者の期待と行政府による新たな企業に対する“ESG”*の義務化を反映し、欧米のクレッジットカードやデビットカードなどペイメントカードの発行銀行(イシュアー)などがプラスチック廃棄物と二酸化炭素排出量を削減するように設計された持続可能なカード発行戦略の展開を加速している。
*ESGの義務化とは、企業が環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に関する情報を開示することを法令で義務付けることを指し、企業が持続可能な社会の実現に向けた取り組みや活動に関する情報を開示することが求められている。 |
こうしたESGの環境問題に配慮したエコフレンドリーペイメントカードには、次のような“カード素材の選定”や“カードの製造プロセスの改善”、“カードのリサイクルプログラムの導入”、“カードのパッケージの工夫”などが求められる。エコフレンドリーなペイメントカードとは、『持続可能な社会の実現を目指すための一環として、多くの企業や消費者に支持され、環境への影響を最小限に抑えながら、品質とデザイン性を両立させたプロダクツである』とされている。
- カード素材の選定
クレッジットカードやデビットカードといったペイメントカードのエコフレンドリーペイメントカードは、再生可能な素材やリサイクル素材が使用され、FSC認証紙*や生分解性プラスチック、R-PETG(リサイクルPETG)**、リサイクルPVC(ポリ塩化ビニル)***、オーシャンバウンドプラスチック、バイオソース、木材など持続可能な素材が使われている。SPAのエコフレンドリーペイメントカードのカード本体には、R-PETG、リサイクルPVC、海洋プラスチック、バイオ由来の材料など、持続可能なエコ材料が含まれている
*FSC認証紙とは、持続可能な森林管理を保証するための国際認証制度であるFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)によって認証された紙のことで、森林の生物多様性や生産性、再生性を維持しつつ、森林の持続可能な管理を促進することを目的としている **R-PETG(リサイクルPETG)とは、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)をリサイクルした材料である ***リサイクルPVC(ポリ塩化ビニル)とは、使用済みのPVC製品を再利用することで得られる材料で、PVCは建築材料や電気製品、自動車部品などさまざまな用途で使用されているが、焼却すると有害なダイオキシンが発生するため、リサイクルが推奨されている |
- カード製造プロセスの改善
エコフレンドリーペイメントカードは、カードの製造過程で、エネルギー消費や廃棄物の削減に努めており、カーボンフットプリントを最小限に抑えている
- カードのリサイクルプログラム
エコフレンドリーなペイメントカードには、カード関連の廃棄物の削減と資源の再利用のため、使用済みカードの“リサイクルプログラム”の導入が図られている
- パッケージの工夫
エコフレンドリーなペイメントカードは、そのカードの送付などに際してパッケージにも環境への配慮がなされており、紙製のパッケージやリサイクル可能な素材が使用されている
『環境意識の高い消費者は、銀行が数千トンのCO²を節約する新しい環境に優しいカードに移行するように駆り立てている』、『私たちのSPAのメンバーは、これがこのセクターの大きな進化の始まりであり、環境に優しいペイメントカードの採用は今後数年間で急速かつ強力に成長すると予測しています』、『SPAのエコフレンドリーペイメントカードは、地球にとってより明るく、より環境に優しい未来を告げる重要な動きです』とSPAの代表は述べている。 |
まとめ ・使用済みプラスチックや植物由来のバイオマス素材を一部または全部に使用し、使用済みプラスチックなどを再生した素材を利用するほか、ステンレスなどの金属素材を使用し、耐久性を高めたカードの採用を図る ・再生素材や土に還る植物由来のバイオマス素材など、環境負荷の低い素材を使用し、廃棄時の環境負荷の低減を図る ・環境に配慮した製造プロセスを採用し、製造時のエネルギー消費量やCO2排出量を削減する取り組みを行うなど環境に配慮した工場でカードを製造する ・カード利用金額の一部を環境保護団体に寄付するプログラムを設け、環境に優しい行動を促す特典など環境保護活動を支援するプログラムの導入 ・デジタル化を推進し、紙の利用を減らす ・ペイメントカードの有効期限を長く設定し、カードの廃棄頻度を減らす こうしたエコフレンドリーなペイメントカードは、消費者や企業の環境問題に対する意識の高まりとともに、今後ますます普及していくことが予想され、さらに今後デジタル化が進み、スマートフォンアプリでモバイル財布アプリによるバーチャルカードを利用する人も増えていくと予想されている。 |