2011年12月21日8:00
2012年度末までにFeliCa/TypeA/B対応のスマートフォンを発売へ
おサイフケータイ機能と合わせNFCによるサービスの広がりに期待
2004年7月に「おサイフケータイ」のサービスをリリースしたNTTドコモでは、2012年冬の端末を目標に、従来のFeliCa通信の機能に加え、TypeA/Bのカードエミュレーション機能の搭載を進めている。NTTドコモ フロンティアサービス部 おサイフケータイ事業推進担当部長 中村典生氏と同部 おサイフケータイ事業推進 NFC推進 担当課長 市川剛氏におサイフケータイの経験を生かしたNFCビジネスへの展開について話を聞いた。
NTTドコモ
おサイフケータイでPayPassやpayWave決済が可能に
スマートフォンの利用者はおサイフケータイの利用率も高い
――NTTドコモ様では、2011年2月に、FeliCa通信に加えてTypeA/Bを利用したICカードエミュレーションサービスが行えるロードマップを発表されました。まずは、その内容についてお聞かせください。
中村:弊社では、2004年から、ソニーのICカード技術である「FeliCa」を利用した「おサイフケータイ」を発売しており、iモードだけではなくスマートフォンでの提供も2010年12月から行っています。2011年冬に発売されているスマートフォンの多くにおサイフケータイが搭載されているように、スマートフォンへの既存サービスのシフトは全社で行っていますが、2012年冬の端末を目標としてFeliCaのおサイフケータイにプラスしてTypeA/Bを利用したICカードエミュレーションサービスが行える機能を搭載する予定です。TypeA/BのセキュアエレメントはSIMに搭載し、FeliCaの機能を端末本体に搭載する形を想定しており、現在、フェリカネットワーク社と協調して、2012年度末までに端末が発売できるように開発を進めています。
これは、2011年2月にスペインのバルセロナで行われた「Mobile World Congress 2011」で発表させていただきました。つまり、PayPass(MasterCard)、payWave(Visa)などの決済が従来のおサイフケータイでできるようになります。基本的に、将来的には国内で発売するスマートフォンにはすべてこの機能を搭載したいと考えています。
――現在のおサイフケータイの浸透度についてはいかがですか。また、従来の機能にTypeA/Bの機能を加えるとなるとコスト増につながる懸念はありませんでしょうか?
市川:従来、おサイフケータイの利用者にアンケートを取ると約30%程度の利用者に留まっていましたが、スマートフォン対応のおサイフケータイ利用者のアンケート結果をみると、従来の携帯電話の倍となる約60%の利用があることがわかりました。この結果から、スマートフォンを利用するユーザーはおサイフケータイ機能をよく利用している傾向があります。
中村:今もおサイフケータイが搭載されているかどうかで端末の人気も変わってきていますので、搭載する意味はあると考えています。例えTypeA/Bのカードエミュレーションが加わったとしてもそれほどコスト増にはならないと考えています。
市川:セキュアエレメントはSIMに搭載してわれわれが提供しますので、それほどコスト面で差はないと思います。基本的に現行のおサイフケータイでは、キャリアがセキュアエレメントを管理して、そこからフェリカネットワークスに委託しています。今後はFeliCaの部分は現行通り、フェリカネットワークスに委託をし、TypeA/Bは別のプレイヤーを含め、どこに委託するのかを考えていくことになると思います。
FeliCaを利用したおサイフケータイの機能は継続し
TypeA/Bによるサービスの広がりに期待
――FeliCaの機能にTypeA/Bが加わることにより、サービスの広がりは期待できますか?
中村:現行のおサイフケータイでも搭載されている機能ですが、タグから情報を読み取るために利用したり、端末間で情報をやり取りする活用が広がると期待しています。また、クーポンなどを利用して「楽しく」「お得」に店舗で買い物できる点などを訴求できればと考えています。
市川:おサイフケータイの「iC通信」のように、NFCの無線通信を使っていただき、利用者同士の情報の交換など、従来のサービスの底上げができたらと思います。
――NFCサービスの提供による収益面のメリットについてお聞かせください。
中村:世界的にNFCを利用したサービスに注目する携帯電話の事業者は多いですが、「SIMにセキュアエレメントの機能を入れるのだから利用料で大きな収入を得ることができるのではないか」、と考えていらっしゃるところもあります。弊社では、それだけではなく、より多くの人に広く使っていただくのが第一だと考えているため、サービス事業者様が活用できるコストレベルで、展開していきたいです。いままでおサイフケータイで展開している「iD」「DCMX」のように自らサービスを行うことで収益を上げることはもちろん、顧客の利便性を高める筋道のなかで新たなビジネスを立ち上げることが重要であると考えています。
市川:重要なのはサービス事業者様がどういうサービスを行うかだと思います。例えば、セキュアなビジネスを行う場合は今のおサイフケータイとそれほど仕組み的には変わらないかもしれませんが、TypeA/Bであれば、日本だけでなく海外まで幅広くカバーできます。例えば、TypeBであれば公的なサービスを設計することができますし、出来合いのFeliCaで簡易にシステムをつくることも可能です。
中村:ICカードのアップレットを作ることができるのがTypeA/Bの特徴であり、逆にそれを行わないと動作しません。一方、FeliCaにはデータの格納領域があり、そこに書き込むだけで済むため、ICカードのアプリケーション開発はそれほど大変ではないというメリットがあります。その辺りのモデルの違いもありますが、サービス事業者様にとってFeliCa、TypeA/Bを利用したさまざまなサービスを提供できます。
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