2012年1月25日8:00
「プロモーション」「モバイル発行」「製品開発」を柱にNFCサービスを展開
1月には銀座の店舗でスマートポスターを利用したマーケティング実験を実施
凸版印刷では、ICカードやICタグの製造や発行、おサイフケータイ向けのアプリケーション開発のノウハウを生かし、NFCに関連した製品やサービスの開発に力を入れている。同社では、「プロモーション」「モバイル発行」「製品開発」の3つの柱をベースにNFCサービスを展開するという。
凸版印刷
KDDIの実験では文化施設での情報配信や
電子マネーのアプリ開発やパーソナライズサーバ構築で協力
凸版印刷では、NFCに関連するビジネスは、将来的に必ず普及すると考えており、実証実験の参加やソリューションの開発などに力を入れている。
まず、2010年5月から実施したKDDIの実証実験では、印刷博物館(トッパン小石川ビルB1F)までの道案内や展示品の情報配信、流通系の電子マネー事業者の次世代電子マネーカードアプリ開発およびパーソナライズサーバの構築を請け負った。
印刷博物館における実証実験では、飯田橋の駅前に設置されているポスターにNFCタグを実装し、NFCケータイをスマートポスターにかざすと、NFCタグよりURLの情報を取得し、凸版印刷のサーバであるTOPICA(トピカ)に接続し、携帯電話のブラウザ上に表示した。印刷博物館までのルートを日本語、韓国語、台湾語、英語で確認できる。また、印刷博物館入口にもNFCタグを添付したポスターを設置。NFCケータイをかざすことで館内情報を多言語でコンテンツを配信した。
2011年10月に開催された金融国際情報技術展(FIT)では、NFC技術を活用したスマートポスターの金融機関での活用について、コンセプトを紹介。金融機関の店内や窓口における新たなサービスを提案した。
東京都、国土交通省が主催する、いつでも、どこでも、だれでもが必要な情報にアクセスできるユビキタス社会の実現を目指し実施している「東京ユビキタス計画・銀座」に利用される街路灯用NFCタグも提供している。今年度の実験では、一般の利用者にNFC対応端末が現地で貸し出しされ、街路灯にかざすことで近隣の情報を取得できる予定である。また、2012年1月21日~3月11日まで、実際の店舗(資生堂の銀座の総合美容施設「SHISEIDO THE GINZA」)を利用して、店内のPOPにNFCタグを添付し、顧客が実験用のスマートフォンをかざすことで、商品情報を多言語で閲覧できる実験を実施している。NFC対応スマートフォンを活用した店舗内の新たなコミュニケーション手法の可能性を検証する。
「弊社では、昨年までも東京ユビキタス計画銀座民間実験に参加していますが、これまでは関係者によるシステムの検証が実験の中心でした。今回は店舗担当者や一般顧客にも実験を体験していただき、利便性や使い勝手など実際のユーザーの声をヒアリングし、今後のソリューション開発に活かしていきたいと考えています」(凸版印刷 情報コミュニケーション事業本部 トッパンアイデアセンター セキュアソリューション本部 戦略・企画推進部 チームリーダー 武田 稔氏)
商用化に向けた今後の課題としては、「決済、プロモーションでどの程度有効活用できるか」という観点がある。プロモーションに関しては、海外からの旅行者へのサービスの提供やQRコードよりもユーザーインターフェースの面で優れているため、NFCケータイが普及すれば効果は高いと考えている。一方、決済は加盟店がPayPassやpayWaveといった決済サービスの有効性を理解してもらい、如何に端末が普及するのかが重要であると考えている。
「カード発行のアプリ開発やパーソナライゼーションについては、従来から弊社が得意としている部分でもあり、おサイフケータイのノウハウも生かせるため、商用化を予定しています。海外に渡航する日本人にも利用価値がありますので、おサイフケータイで提供している決済サービスより広がる可能性が高いと思います」(武田氏)
スマートポスターを利用したプロモーション活用の開発に力を入れる
NFCリーダが付いたディスプレイカードの商用化を目指す
具体的なアプリケーションについては、まずはスマートポスター、次にPayPassやpayWaveなどの決済が普及する道筋を描くのではないか、と考えている。そのほか、同社が力を入れるギフト・プリペイドカードやポイントカード、交通系ICカード、社員証などでの利用も期待している。そのため、NFCビジネスの展開については、「プロモーション」「モバイル発行」「製品開発」の3つが柱になるという。なかでも、スマートポスターを活用したプロモーションに力を入れる。ここは、商業印刷も含め凸版印刷が得意としている部分であり、「NFCモバイルを、店舗にお客様を呼び込むコミュニケーションツールとして展開していきたい」と、武田氏は期待を述べる。
また、前述のクレジットカード、電子マネーの発行についても市場のシェアを相当獲得できると自信を見せる。ほかにも、クーポンやポイントカードといったアプリの開発なども展開していく。
製品については、現在、NFCリーダが付いたディスプレイカードを開発している。
「例えば、スマートフォンを持てない小学生などでも安価に購入できるディスプレイカードの開発を進めています。電子マネーや乗車券の残高表示をはじめ、決済や広告表示、プロモーションなどいろいろな用途で利用できる製品として、バッテリーレスの対応などの課題をクリアし、商用化を行う予定です」(武田氏)
トッパンフォームズと連携し、価値の最大化を目指す
2012年後半からソリューションを展開へ
なお、決済ネットワークやリーダライタモジュールの提供についてはグループのトッパンフォームズと連携しており、「トッパングループ全体でNFCビジネスを展開することにより、価値の最大化を目指していきたい」と武田氏は意気込みを述べる。
NFCのブレイクに関しては、「NFCケータイが普及し、生活者の3~5割が利用する2013年以降」(武田氏)であると考えている。同社では来たるべきNFC時代に備え、製品開発を進め、2012年後半からのソリューションを提供する方針だ。なお、海外展開については、「まずは国内でのビジネスが中心だが、海外渡航者向けにアプリなどを提供して、それを将来的に海外でのビジネスに広げていくことも検討していきたい」としている。