2010年7月5日 14:28
“カードで気持ちを贈る”“顧客を囲い込む”
企業の新しいプロモーションツール「プラスチックプリペイドカード」
米国では贈呈用として数多くの小売店が「ギフト・プリペイドカード」を販売している。日本でも百貨店や映画館などでギフト用途として利用されているほか、リチャージして利用する電子マネー、ポイント・割引などと連動した販売促進のツールとして活用されている。本特集では企業の新しいプロモーションツールである「ギフト・プリペイドシステム」の最新動向と導入企業の取り組みを紹介する。
利用方法は「ギフト」「プリペイド」
券面のデザインを工夫する企業も
プラスチックプリペイドカードは、オンライン上のサーバでバリューを管理し、ネットワーク経由でサーバにアクセスし、金額をチャージする仕組みとなっている。店舗側は既存のPOSにシステムを組み込むか、専用端末、クレジットカード端末などを利用して金額のチャージや決済処理を行うことができる。
プラスチックプリペイドカードの利用方法としては大きく2つに大別される。まずは「ギフトカード」。贈呈用のカードとして、好きな金額をチャージしてプレゼントする活用方法だ。今回の特集で紹介するTOHOシネマズやHMVジャパンなどで発行するカードはギフトとしての利用を意識している。また全国の百貨店で利用できる「百貨店ギフトカード」も使い切りタイプとなっており、髙島屋などでは券面のデザインにバリエーションを持たせることにより、期待以上の成果をあげている。
もう1つが電子マネー(プリペイドカード)として、個人で何度でもチャージして利用する用途だ。特集内で紹介するユーシーシーフードサービスシステムズやリラクなどはリチャージ可能なプリペイドカードを運用している。日本では非接触ICカードを利用した汎用的な電子マネーが多く利用されているが、一企業で展開するとなるとまだまだコストが高い。その点、磁気式のプラスチックカードならば、媒体の印刷費用やPOSの改修コストを抑えてプリペイドカードを展開できるメリットがある。
回収・集計作業の手間を軽減しキャッシュフローを改善
ポイントや割引との併用でより効果を高める
導入する企業のメリットとしては、サーバで管理するため、紙の商品券などに比べ、回収作業や集計作業の手間を省くことが可能だ。また前受け金のためキャッシュフローの改善につながる。さらに、「最終利用日から1年間」といったように有効期限を設けることで退蔵益が期待できる。一般的に最終利用日から1年間の有効期限に設定した場合、7~8%の退蔵益が発生すると言われている。
企業にとっては店舗独自のハウスカードを発行することにより、集客効果が見込め、額面以上の買い物を期待できる。例えば3,000円のカードをプレゼントされた顧客が、1万円の買い物をし、当該店舗のファンになれば、その友人にカードをプレゼントするなどの効果が考えられる。当然、カードにプリペイド機能を付けることにより、ギフトを贈られたお客がリピーターとして何度も利用する可能性もある。
成功している企業のなかには、ポイントや割引サービスなどを柔軟に組み合わせて運用しているところも多い。例えば、入金金額ごとにポイントの付与率を変更し、チャージの段階からより多くの金額を入金してもらえるように工夫しているところもある。
ギフト需要としては、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデー、母の日といったシーズンごとのイベント、誕生日などの記念日と連動した販促施策を実施しやすくなる。
自社発行のカードを他店舗で販売
ユーザーは欲しい店舗のカードを購入できる
今後は、顧客のカード購入と同時にPOSレジでカードに金銭的価値を付与したり、カード発行企業の販売網の構築、販促施策の実施などを行う「ギフトカードモール事業」が注目を集めそうだ。現在、国内ではインコム・ジャパン、ブラックホークネットワーク、電算システムなどがギフトカードモール事業を支援する企業としてビジネスを展開している。
すでに国内でプラスチックプリペイドカードの発行を行う企業のなかには、ギフトカードモールを利用して他店で自社カードの販売、PRを行うことを検討しているところもある。米国では11月、12月のクリスマスシーズンにプレゼントを交換する習慣があり、流通店舗の多くでギフトカードモールが展開されている。そこには、各流通企業のカードが陳列されており、ユーザーは欲しいカードを購入可能だ。陳列された状態ではカードは無価値だが、店舗の従業員がPOSレジでアクティベーションすることにより、金銭的価値を持つ仕組みになっている。そのため、流通店舗は盗難や紛失などによる問題を最小限に抑えることができる。
国内では西友、ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラ、HMVジャパンなどが、インコム・ジャパンと連携してギフトカードモールを展開している。モールにはアップル社の「iTunes Card」、ネクソンの「NEXONポイントカード」、シグナルトークの「Maru-Janギフトカード」などが陳列販売されている(各事業者によって販売するカードは異なる)。また、CD/DVDのレンタルショップが過去に検証を行ったほか、ダイエーでも数十店舗でギフトカードモールの実験を行っている。
大手流通企業でのスタートにより
ギフトカードモールの普及はなるか?
今年の秋から来年にかけては日本を代表する大手スーパー、ショッピングセンターやコンビニエンスストアなどで、ギフトカードモールの運用が開始される予定である。これらの流通チェーンでギフトカードが流通することにより、日本における市場が大きく広がると期待されている。
また、今後は国際ブランドが搭載されたプリペイドカードの登場が予想される。同カードは基本的に国際ブランドのマークが記載された加盟店であれば、クレジットカード同様に利用することが可能だ。米国では、国際ブランド搭載のカードの伸びが著しいこともあり、国内でもインフラの整備が進めば、一気に普及する可能性もある。
いずれにせよ国内でのプラスチックプリペイドカードのビジネスはまだスタートしたばかりだ。まだまだ日本国内での展開においては数多くの課題もあることから、今後数年間はカード発行加盟店、モールでの販売店舗はもちろん、ASP事業者、ギフトカードモール事業者などが力を合わせ、生活者に受け入れられるように大切に育てていく必要がありそうだ。
↓次の記事「カード流通の仕組み整備が米国での普及を牽引 日本でのギフトカードモール浸透は来年以降?」~インコム・ジャパン
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