2016年1月19日8:00
クラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」によりインバウンド対応を強化
2020年の東京五輪に向けた動きに加え、訪日外国人の増加などにより、リテール決済の多様化が加速している。2015年10月に開催された「Canon EXPO 2015 Tokyo セミナー」では、NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 事業部長 河合 正博氏が国内の最新動向について講演した。また、NTTデータでは、クラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」において、キヤノン製の多様な端末により、新たな決済を柔軟に対応するソリューションを準備している。
国内ではキャッシュレス化は重要な施策
地方創生の動きも加速
アベノミクスの三本の矢が策定された「日本再興戦略」において、キャッシュレス化は重要な施策と位置付けられている。2014年末には、内閣官房、金融庁、消費者庁、経済産業省、国土交通省、観光庁の連名で、ATMの普及、クレジットカードの利用店舗の増加、利用可能化の表示など、訪日外国人に向けた利便性向上を盛り込んだ「キャッシュレス化に向けた方策」が提示されている。2015年には、これを踏襲する形で「日本再興戦略 改訂 2015」が発表された。
金融庁では、2014年から決済業務等の高度化に関するスタディ・グループが立ち上がり、全12回にわたり議論を実施。2015年の4月に中間報告が行われ、そこから発展した「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」が2015年7月から、「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」が2015年5月から開催されている。「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループでは、「リテール分野を中心としたイノベーションの進展」、「企業の成長を支える 決済サービスの高度化」「決済インフラの改革」、「決済システムの安定性と情報セキュリティ」、「イノベーションの促進と利用者保護の確保」が議論されている。中間整理では、アクションプランや法整備の課題なども記載されているが、アクションプランについては「決済業務の高度化に関するワーキング・グループ」、法制度については「金融グループを巡る制度の在り方に関するワーキング・グループ」に引き継がれている。
この流れとは別に、2013年に安倍内閣の成長戦略の一環として公表された「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」において、キャッシュレス化に向けた施策および金融インフラに関する記載がある。具体的には、電子マネーやクレジットの利用環境の整備、海外クレジットカード対応の設置促進などがまとめられている。2014年も同様のプログラムが記載されており、2015年は地方における免税環境の利用環境整備、外国人旅行者情報・購買情報の収集・活用に向けた仕組みの構築が描かれている。
観光立国に向けた動きとして、経済産業省、総務省におけるタスクフォース/ワーキング・グループでプラットフォーム構想が検討されている。両者とも、1つのカードやスマホを活用することは変わらないが、経済産業省では、訪日外国人の購買履歴を情報収集して、日本企業と共有することを想定している。
キャッシュレス化に向けた取り組みとして、これまで多くの訪日外国人は都市部に訪れているが、地方での決済環境を整備するために、地方創生予算を活用して決済端末導入補助の取り組みが行われている。地方創生先行型として1,700億円が活用され、新潟県、広島県、宮崎県などで設置が進められている。
内閣府では、地方創生交付金のうち1,080億円の予算を要求。また、経済産業省では、Wi-Fiの設置、免税対応機器等の導入などの「地域・まちなか商業活性化支援事業」として4,200億円、観光庁では、免税や決済インフラの整備のために「訪日旅行促進事業」として13億円を要求している。今後も国や自治地を含めて、決済環境の整備に向けた予算が計上されると思われる。さらに、国内でキャッシュレス化が進むことにより、4兆円弱の社会コストが削減可能であるとしている。
国内企業は決済の高度化、インバウンド向けサービス提供に注力
米国NFC決済は三つ巴の戦いに
欧州では、SEPA(Single Euro Payment Area)の通貨統一に加え、個人間送金を行う部分が議論されている。また、金融機関のプレイヤーは銀行が中心だったが、PayPalやGoogle、Amazonなど、従来の決済プレイヤー以外が登場している。さらに、インドのNPCI(National Payments Corporation of India)など、ローカルの決済スキームが生まれている。
国内の決済市場をみると、2012年の民間最終消費支出におけるクレジットカード決済は約14%。電子マネーにしてもわずか2.3%であり、現金が83.6%を占めているが、徐々にキャッシュレス化の波は来ている。また、電子商取引のBtoC市場を見ても2013年で3.67%だったが、順調に拡大している。
クレジットカード決済については、ドングル型の決済端末が登場し、利用シーンも増加。また、EC市場の成長に伴い、EC加盟店でのクレジットカードの利用増加が見込まれる。デビットカードでは、従来のJ-Debitに加え、国際ブランド搭載のカードが登場。プリペイドカードでは、国際ブランドがブランドプリペイドカードを勧めており、若年層向けの非現金決済手段として注目されている。電子マネーでは、流通系電子マネーの購買情報を収集し、その情報をマーケティングに活用する事例が増えている。
金融機関の動きをみると、銀行では、金融庁による「決済の高度化」に向けた要請を受け、特にリテール決済の高度化実現に向け、フィンテック(Fintech)企業との連携等を検討している。クレジットカード会社も従来のビジネスに加え、フィンテック企業との連携を深めている。また、2020年に向けて、加盟店端末のEMV化も課題となる。さらに、決済代行事業者も融資業務を手掛けるなど、従来の手数料モデルからの変化が見受けられる。
決済デバイスの変化として、EMVライアビリティシフトを受け、従来のドングル型からセパレートタイプが主流になっている。POS端末も「大型専用POS」から「PC POS」そして、「タブレットPOS」へと変化しており、決済以外の高度な処理も可能となってきた。海外の動向をみると、モバイル決済サービスである「Google Wallet」の元責任者であり、PayPalの上級役員だったオサマ氏が社長を務めるPOYNT社が開発した「Poynt」は、磁気・接触のクレジット決済、非接触ICカード(NFC)、Bluetooth、QRバーコードを利用した決済、ポイントプログラムやバックエンドのオフィスまで活用できる端末となっており、価格も汎用的な技術を用いることで300米$に抑えている。
また、アップルでは、NFCを利用した決済サービス「Apple Pay」を2015年10月から米国で提供開始した。Apple Payでは、指紋認証に加え、専用の決済番号が受け渡される「トークナイゼーション」技術を採用し、アップルはカード情報を管理しないことで、高セキュリティを実現している。アップルでは、532行と提携しており、70万加盟店で利用可能だ。また、英国でも2015年7月に25万か所、13行と提携してサービスを開始。そのほか、カナダ、オーストラリアでサービスを開始し、2016年には香港、スペイン、シンガポールで利用できるようになり、日本でもいずれサービスが行われると思われる。
Samsungが開始した「Samsung Pay」もNFCを活用したモバイル決済という点では変わらないが、買収したLoop Payが持つ技術である「Magnetic Secure Transmission(MST)」と呼ばれる無線電波でカード番号情報を読み取り機に転送することが可能となり、NFC端末が利用できない加盟店でのサービスも可能だ。Smamsung Payは韓国国内での発売(2015年8月20日)以降、1日あたりの決済件数は10万件、 累積加入者数は100万人、累積決済金額は1000億ウォン以上を記録。また、インターネット決済や銀行ATMの引き出しでも利用できるようになる。
米Googleでは、2015年5月28日、サンフランシスコのモスコーニセンターで年次開発者会議「Google I/O 2015」において、次期Androidのプレビュー版の「M Developer preview」を紹介。その新機能 の1つとして「Android pay」が発表した。今後は、Apple Pay、Samsung Pay、Android Payと三つ巴の戦いになると思われる。