2017年2月7日8:07
磁気カードやICカードを用いて期間内の観光を便利に
“トラベラーズパスカード”(観光カード)は、“シティトラベラーズカード”とも呼ばれ、磁気カードやICカードを用いて、一定金額をあらかじめ支払うことにより数日やな1週間など一定期間内に、1つのエリア(主に同一都市圏)内における旧跡や美術館、博物館、動物園、水族館、テーマパークなど複数の提携観光施設へのアクセスができる。トラベラーズパスカードには、パス期間中にバスや地下鉄、路面電車などの公共交通機関を無料で利用できるサービスが付いている場合もある。欧米の都市などでは、こうしたカードが観光推進において、大きな役割を果たしているケースもある。
1枚で期間内の交通と観光をシームレスに
ガイドブックをトラベラーズパスカードの購入者に提供するケースも
トラベラーズパスカードは、空港や駅、トラベルビューロー、あるいは旅行会社、街中のキオスクやコンビニエンスストアなどでも販売されている。また、トラベラーズパスカードを取り扱うプロバイダーが、インターネットを通じて、旅行に出発する前に直接旅行者にオンライン販売するケースも増加している。インターネットを通じたオンラインによる代金決済は、VisaやMastercardなどのクレジットカードやオフラインデビットが主に用いられているほか、PayPalなどの電子決済サービスが取り入れられているケースも増えている。
また、観光施設をスムーズに周遊できるように、地図や地下鉄の路線図などが付いている観光ガイドブックをトラベラーズパスカードの購入者に提供するケースも多い。こうした観光ガイドブックには、ショップやレストラン、ギフトショップ(土産物店)などの割引優待クーポンが付いている。また、別途、クーポンブックをトラベラーズパスカード購入者に配布している場合もある。
ヨーロッパや北米の主要な観光都市では従来から発行
シンガポールや韓国などではIC乗車券を用いたカードも
内外からの旅行者にとってお得なトラベラーズパスカードは、我が国ではまだあまりなじみがないものの、ヨーロッパや北米の主要な観光都市では従来から発行されてきた。たとえば、たとえば、ヨーロッパではトラベラーズパスカードの優劣が影響を及ぼしている。パリ、ローマ、マドリッド、ロンドン、ウィーンなどヨーロッパの主要な観光都市では、複数のサービスプロバイダーが独自のトラベラーズパスカードを発行し、価格競争を含めて競合し合っている。我が国の滞在型の旅行を好む個人旅行者の間でもリピーターを中心にこうした欧米のトラベラーズパスカードの愛用者が少なくない。アジアにおいては、経済発展に伴って観光ブーム、旅行ブームが起き、シンガポールや韓国などではIC乗車券を用いたトラベラーズパスカードが発行されている。
なお、日本では、JR西日本、阪神電気鉄道、阪急電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、大阪市交通局、神戸市交通局、京都市交通局の鉄道9社局、関西エアポートおよび関西経済連合会は、関西への訪日外国人旅行者の受入環境整備の一環として、訪日外国人旅行者向け関西統一交通パス「KANSAI ONE PASS」を、2016年4月8日から販売している。「KANSAI ONE PASS」は、JR西日本の「ICOCA」をベースとしたチャージ式交通ICカードで、「ICOCA」エリアや「PiTaPa」エリアなど、「ICOCA」利用可能エリアの鉄道・バスを1枚のカードで周遊できる。また、関西国際空港内の店舗を含めたショッピング施設や観光スポットにおいて利用できる優待特典を付加している。
関西では、磁気カードの交通カードと周遊パスを共同運営するスルッとKANSAIが“大阪周遊パス”などのトラベラーズパスカードを発行している。
トラベラーズパスカードには、紙製のバウチャーやクーポンブックもまだ一部で使われているが、多くは磁気カードで、コンタクトレスICカードを採用するケースも増加している。短期間に使い切るトラベラーズパスカードにコストの高いICカードが用いられるのは、偽造防止や有料の観光施設や文化施設への二重入場や複数入場などの不正アクセスをより厳格にチェックするためである。なお、磁気カードやICカードの“ツーリストカード”には、有料の観光施設や文化施設への入場に際して、クレジットカードなどのペイメントカード用のカードリーダーライターが代用されるケースも多い。
こうしたトラベラーズパスカード(観光カード)は、観光マーケティングの1つの“ツール”であり、リピーターや滞在型の外国人旅行者にとってお得で、ぜひとも持ちたいと思うプログラムの企画・開発が重要である。日本でも全国各地で魅力的なトラベラーズパスカードが登場することに期待したい。