2017年5月26日9:43
ビザ・ワールドワイドは、2017年5月24、25日に韓国・ソウルのグランド ハイアット ソウルで、「Visa Security Summit」を開催した。オープニングのキーノートセッションでは、「The Payment System Landscape – A Global Risk View」として、セキュリティのグローバルな動向について、Visa Inc. ヴァイスチェアマン&チーフ・リスク・オフィサー エレン・リッチー氏が紹介した。
不正比率は過去15年で3分の2に低下
2016年は前年よりも若干比率が高まる
世界中で決済サービスを提供するVisaだが、グローバルな売り上げに対しての不正比率は、1993年から2016年の期間で約3分の2まで低下した。その理由として、EMVチップ搭載カードの発行、リアルタイムオーソリ、独自のパスワード認証による本人確認「VISA認証サービス(Verified by VISA)」などの対策を行ってきたことが挙げられる。2012年から2015年の不正比率は横ばいだったが、2016年は100$あたり6~7セントの不正があり、2015年よりも若干不正比率が高まっていることから、さらに不正対策を強化したいとした。
EMV化では、これまで不正の温床だった米国での対応が進んでいるという。カードへのEMVチップの搭載に加え、加盟店の対応端末も200万台まで増えている。現在は、米国における42%の取引、10億トランザクションはEMV取引になったそうだ。これにより、EMVチップは、58%の偽造被害が減り、加盟店全体で39%の不正被害率の減少につながっている。
偽造カードの不正が減る一方で、カードを提示しない「Card Not Present」の不正が世界的に増えているが、「米国は非対面の不正はフラットです。不正検知対策が高度化されており、いい対応ができています」とリッチー氏は成果を口にする。
今後5年間で世界の不正使用は125%まで増加?
不正使用対策で複数のアプローチを進める
ただし、デジタル化への移行が進む中、今後5年間で世界の不正使用は125%まで増えると言われている。そんな中、Visaでは、「データ保護」「データの無価値化」「脆弱なデータを守る」「セキュリティ標準の策定」が重要だとした。
Visaでは、Visa製品やソリューションの開発を支援する「Visa Ready(ビザ・レディ)」というプログラムがあり、mPOSやトークンサービスプロバイダなどの標準を策定している。また、データの無価値化では、前述のEMVの推進に加え、トークン化への対応を推し進めている。
さらに、カード発行会社(イシュア)に対して、リアルタイムで取得するリスクスコアを用いてカードからネットワークまでの不正を検知する「Visa Advanced Authorization(ビザ ・アドバンスド・オーソリゼーション)」を提供している。そのほか、不正の実行犯のインフラを逆にハッキングしたり、警察と協力して不正抑止に努めているそうだ。
また、消費者に対しては、カードが使用された際に通知を行うことにより、仮に不正な取引が行われた際はいち早く対応できるように支援している。
加盟店向けのトークン化は「NETFLIX」でパイロット
リスクベース認証の「3-Dセキュア2.0」を標準化
新たな取り組みとして、トークン化は、Apple Pay対応を皮切りに、現在はAndroid Pay、Samsung Pay、Microsoft Walletと、複数のモバイル決済サービスへ対象を拡大。Visaでは、デジタルな取引はトークン化により、カード番号を別の乱数に置き換えることを標準にしていきたいとした。また、加盟店での取引のすべてをトークン化させることが理想だが、現在はVisaのID決済サービス「Visa Checkout(ビザ・チェックアウト)」を利用して、映像ストリーミング会社の「NETFLIX(ネットフリックス)」でパイロットが行われている。
ユーザー認証では、従来のPINやパスワードに加え、バイオメトリクス、データやロケーション、トランザクションの習慣などの要素で認証させる流れが進んでいくとした。また、加盟店での取引ごとのリクス・ベース判定によりリスクの高い取引のみ承認を要求することができる次世代の本人認証サービス「3-Dセキュア2.0」により、非対面取引のセキュリティと利便性を両立できるとしている。「3-Dセキュア2.0」では、前バージョンの10倍のデータ量が提供され、セキュリティの大幅な強化が実現されるという。イシュアは2019年4月までに「3-Dセキュア2.0」への対応が必要となる。
なお、「Visa Security Summit」は、2017年で13回目の開催となった。2017年の参加者は467人で、そのうち42%がVisaのメンバー会社の参加だ。また、会場では、セキュリティ関連企業の製品やソリューションの展示も行われた。