2018年4月11日9:00
福岡市では、2015年12月15日から、福岡市営渡船の待合所の乗船券券売機、2016年4月1日から各待合所窓口において、交通系ICカードの電子マネー決済を導入した。利用者は、福岡市交通局の「はやかけん」および相互利用可能な交通系電子マネー(SUGOCA,nimoca,Kitaca,Suica,PASMO,TOICA,manaca,ICOCA)での乗船券の購入が可能となった。離島を含む地域を対象とした交通系ICカードの電子マネー決済サービスは全国で初めての導入となっている。
少額運賃で電子マネーとの親和性は高い
窓口ではシンクライアント型を導入
福岡市営渡船では、博多・志賀島航路として博多~西戸崎、博多~志賀島、西戸崎~志賀島、玄界島・博多航路として玄界島~博多、能古・姪浜航路として能古~姪浜、小呂島・姪浜航路として小呂島~姪浜の4航路を運営している。
多くの運賃が1,000円未満の少額、最も高い運賃でも小呂島~姪浜の1,760円だったため、利用者からも運賃支払いの電子マネー対応を求める声があった。また、電子マネーであれば、現金に比べ、支払いの時間を短縮可能だ。
福岡市交通局では電子マネー「はやかけん」を運営しており、市民カードとしてのサービス拡充等も含め、福岡市交通局などにも相談したという。当初は駅などで利用されている改札機の導入を検討したが、導入や運用コストは億単位となるため、断念した。
コストを1,000万円程度に抑えられる券売機にリーダーを設置する形で、2015年12月15日から、小呂島以外の券売機で電子マネー決済を導入した。
しかし、小呂島には券売機がなく、また貨物運賃、特殊手荷物運賃、自動車航送券、高齢者や障がいなどを持つ人とその介助者を対象とした割引切符等の料金は窓口で処理していた。そこで、窓口での電子マネー決済サービスを検討したという。
福岡市港湾空港局客船事務所 経営改善計画担当 森幸一郎氏は、「離島の関係で選べるシステムは限られましたが、シンクライアントで、無線であれば安価で、通信コストも抑えられるので、採用を決定しました」と説明する。電子マネー決済は、決済端末、モバイルプリンタ、タブレットとモバイルの4G LTEの通信ネットワークを利用して実現。当初はリッチクライアント型のシステムや有線ネットワークも検討したが、工事費用やランニングコストなどを考え、シンクライアント型のシステム導入を決定した。
窓口に交通系電子マネーを導入
安価なインフラコストで運用可能に
なお、端末はリースのため初期費用を抑えることができ、月々のランニングコストもわずかで済む。決済手数料も福岡市交通局がはやかけんを運営していることもあり、0.6%に抑えられた。
福岡市営渡船では、2016年4月1日から、各待合所窓口にはやかけんなどの交通系電子マネーを導入。電子マネー決済で高齢者や障がい者とその介助者を対象とした割引切符の購入が可能だ。
森氏は、「シンクライアント型ですが、特に読み取りが遅いという声もなく、順調に稼働しています」と語り、笑顔を見せる。乗船客は、希望する路線を窓口で告げると、職員がタブレットで券種を選択し、電子マネー決済を促す。乗船客は電子マネーリーダーにカード等をかざすと支払いが完了。職員は乗船券と領収書を乗客に渡して処理が完了する流れだ。
電子マネーの利用率は3%弱
券売機での無線環境の導入も検討
現在、電子マネー決済の利用は3%弱。利用率は最初の1年間は徐々に高まっていたが、現在はほぼ横ばいの状態だという。交通系電子マネーの利用は、はやかけん、nimoca、SUGOCAなどの福岡の電子マネーが多いが、SuicaやICOCAも目立つそうだ。また、券売機は改札機よりもコストを抑えられたとはいいつつも負担となったため、「次回の機器入れ替えの際は無線関係のシステムを導入して、コストを抑えることも検討していきたい」と森氏は語った。