2018年9月10日8:05
デジタルセキュリティベンダーのジェムアルト(Gemalto)は、世界のさまざまな国々でeパスポート事業を構築・運用するなど、公共部門でも積極的な事業展開を進めている。同社では、2018年9月7日に記者説明会を開催し、国内で本格的に事業参入すると発表した。日本では、5年間で50億円の売上を目指す。
eパスポートはOS、チップ、データカード、ブックレット、関連サービスまで提供
ジェマルトは、デジタルセキュリティ分野において、世界で1~2位を争う売上規模を誇る。2016年の売上が31億ユーロ、ユーザーは20億以上となり、180以上の国でビジネスを展開している。同社では、金融とリテール、モバイル、IoT、政府・公共、エンタープライズ、SWマネタイゼーションの6つの主要領域でビジネスを展開している。
ジェムアルトは、政府系セキュアドキュメント&コンポーネントとして、電子パスポート、電子免許証や各種IDカード、出入国管理/ビザ管理/自動ゲートなどを提供している。例えば、パスポートのOS、チップ、データカード、ブックレットから関連サービスまですべてにわたり提供できる数少ないベンダとなっており、世界40カ国で採用実績がある。
顔認証システムはバックエンドシステムのみを提供
また、生体認証ソリューションとして、国境警備や民間向け生体認証デバイス、ソフトウェア、システム、ライブ顔認証システム、バックグラウンド解析システム、顔認証、虹彩認証、指紋認証、非接触静脈認証などを提供している。
同事業では、米国国境警備、香港警察をはじめ、世界80カ国200拠点以上の政府系施設で採用されている。民生向けには顔認証エンジン「LFIS」を販売中だ。
ライブ認証システムでは、ビデオ処理による顔認証システムでは、監視者の介在なしで自動的に顔を識別。1人の顔の複数の画像(m) を、多数の顔(n)と照合するm:n方式を採用している。ジェムアルト 公共事業本部 シニア・セールス・ダイレクター 酒匂潔氏は、「認識率は世界トップクラスです」と自信を見せる。また、簡易に操作できるWebインタフェースを装備。さらに、同社の特徴として、「ソフトウェアエンジンのみ提供するバックエンドシステムとなり、連携するさまざまな機器に対応できる」ことだとした。海外空港での実績として、カナダのオタワ空港で導入されている。
ドキュメントリーダーソリューションは国内でも利用用途は増える見込み
ドキュメントリーダーソリューションとしては、国境警備や民間向けドキュメントリーダー製品群、パスポート券面情報読み取りシステム(パスポートリーダー)、パスポート交付受付システムや認証ソフトウェアを展開している。
3Mの事業を買収したパスポートなどのセキュアドキュメントの専用スキャナーは、WindowsベースのSDKで案件独自の組込みが可能で、Androidにも対応予定だ。さらに、用途に応じて専用アプリケーション含めたパッケージも用意している。国内では、ホテル向けパスポートリーダーシステム、地方自治体向けパスポート交付システム、訪日外国人対応の免税店向けシステムで採用。海外では、米国・国土安全保障省CABIS入国管理システム、米国の州警察生体認証用端末などで使用されている。今後は、ID事業の拡大により、国内での需要も高まると想定している。
そのほか、セキュアマテリアルソリューションとして、盗難防止用特殊シールやIDカード素材の各種ケミカル製品、特殊印刷技術を提供している。