2020年1月23日8:00
レポート「世界の決済イノベーション市場要覧」の「キャッシュレスのための送金とペイメントのイノベーション」(第1章)では、カテゴリ別の世界の主なペイメントイノベーション事業者(日本を除く)と国別の世界の主なペイメントイノベーション事業者(日本を除く)のリスティングを行っている。今回は、その中からAPIのコンセプトとメリットについて紹介する。
・オープンAPIのコンセプト
API(Application Programming Interface)とは、もともと15年から20年前にエンタープライズシステムやSOA (Service-Oriented Architecture)の時代に開発されたもので、さまざまなシステムやアプリケーションが互いに通信し、処理やデータを共有できるソフトウェアツールである。初期の頃のAPIは、主に内部集中型で、独自仕様で標準化されていなかったため、外部の世界にはアクセスできず、それらにリンクするにはかなりのカスタマイズ作業が必要とされていた。しかし、今日ではオープンAPIの出現により、それらの役割と重要性は全く新しいレベルに拡大している。
かつては他行との差別化を図るため、銀行は自社のサービスと技術ポータルの強さをめぐって互いに競争し、最近まではほとんど常に自行内で開発され、所有され、管理されてきた。しかし、現在では、差別化の基盤が他の2つの基準に移行している。その1つは、コアトランザクションバンキングサービスと料金である。フロントエンドの次に、サードパーティがこの統合を実現できるようにするために提供しているオープンAPIのクオリティである。これに関連して、APIのクオリティは、それらが共有できる情報の正確性、適時性および包括性にかかっている。
こうしたオープンAPIの開発者は、複数のベンダーの複数のAPIを利用して既存のシステムに新しいユーティリティを素早く簡単に接続できる。テクノロジーやソーシャルメディアなどの業界では、オープンAPIが急速に普及している。
・オープンAPIのメリット
銀行向けのオープンAPIにより、銀行のサービス、価格、顧客の利用に関する情報にアクセスできるようになるので、顧客固有のニーズに合わせた新しいサービスを提供することができるようになる。かつて銀行は顧客が自分のサービスにアクセスするためのチャネルとアプリケーションを構築、所有、管理してきたが、オープンAPIを使用すると、サードパーティのデベロッパーは銀行のシステムにアクセスし、顧客が使用するための独自のチャネルとインタラクティブ画面を構築することができるようになる。その結果、顧客は銀行が設定しておらず直接制御することができないポータルを通じて、銀行取引や口座を確認および管理することができるようになる。
銀行向けのオープンAPIは、単一のアプリケーションを通じて、オンラインバンキングサービスやモバイルバンキングサービスの顧客が複数のプロバイダーとの間で保有するアカウントを管理できるようにすることで知られている。また、オンラインで当座預金口座と預金口座間での資金の移動を行い、当座貸越費用を回避したり、より高い利子の支払いから利益を得たりすることもできる。顧客に顧客自身の使用パターンに合わせ、簡単で、安全で、信頼できる価格とサービス品質の比較をさせることができる。
・オープンAPIプロバイダーは?
PayPal傘下のBraintree、Dwolla、Stripe、Wirecard、Adyenなどの「ペイメントゲートウェイAPIプロバイダー」、Xignite、Zerodhaなどの「トレーディングAPI」、Yodlee、Truliooなどの「認証/検証API」、Uphold、PayCommerceなどの「送金API」、Kontomatik、Fidor、Figoなどの「データ集約API」といったさまざまな銀行のAPIプロバイダーは、金融サービス業界のさまざまな分野に対応するソリューションを構築する機会を拡大している。