2025年2月20日8:00
欧州のスマートカード(ICカード)と環境問題の第2回目は、スマートカードなどのペイメントカードのマーケットにおいて、多くのシェアを占める有力なベンダーがSPAのメンバーとなっている。SPAのペイメントカードやモジュールを供給するベンダーのメンバー企業のデータに基づいたスマートカードの出荷状況などについてレポートしてみたい。
Index
(1)Smart Payment Association (SPA、スマートペイメント協会)
(2)スマートカードとモジュールの出荷状況について
(3)エコフレンドリーカードとは
(4)SPAのエコフレンドリーペイメントカード発行状況
(5)スマートカードとリサイクル
スマートカードとモジュールの出荷状況
2023年は、スマートペイメントカードのマーケットにとって非常に成長した年となった。(表)は、SAPのメンバー企業の2022年度、2023年度のスマートカードとモジュールの出荷状況を示したものである。
(表)ICカードとモジュールの出荷状況(2022年~2023年)
|
2022年度 |
2023年度 |
増加 |
増加割合 |
決済用のICカードとモジュールの出荷数 |
26億ユニット |
32億ユニット |
6億ユニット |
∔14.3% |
エコフレンドリーペイメントカードのシェア |
14% |
21% |
7ポイント |
∔50% |
非接触決済製品のシェア |
84% |
88% |
4ポイント |
∔4.8% |
出典:Smart Payment Association (SPA)の年次レビュー
2024年7月に公表された2023年のSPAの年次レビューによると、2023年度において、SPAのメンバーのベンダーによって32億ユニットのスマートペイメントカードとモジュールが出荷されている。これは、2022年度の26億枚から6億ユニット、+14.3%と大幅に増加している。この大幅な増加は、次のような要因が挙げられる。なお、この年次レビューは、SPAのメンバーと市場監視諮問委員会のデータを基に作成されたものである。
・ICチップ不足の緩和
2023年には、世界的なシリコンチップ(ICチップ)不足が緩和され、SPAのメンバーでペイメントカードやモジュールを供給するベンダーは需要に応じた供給を確保することができた
・SPAのメンバー拡大
SPAへの新しいメンバーの参加や既存メンバーの市場拡大により、ペイメントカードやモジュールの出荷量が増加した
・在庫補充の需要
2022年度の需要の1部が2023年度に反映されため、在庫補充のための需要が増加した
プラスティク問題など環境対策が講じられるようになり、エコフレンドリーなペイメントカードの出荷も増加し、2023年には世界全体のSPAのカード出荷量の21%を占めている。これは、2022年の14%から7ポイントの増加である。特に、ヨーロッパのマーケットがこのエコフレンドリーカードへの移行をリードし、エコフレンドリーカードのおよそ半分がヨーロッパのマーケット向けに出荷されているといわれている。
環境に優しいペイメントカードであるエコフレンドリーカードに対する消費者の期待の高まりと、ヨーロッパを中心とする各国政府による新しい企業のESG義務*を反映して、2023年度には世界各地のイシュアーバンク(クレッジットカードやデビットカードといったペイメントカード発行銀行)が、プラスチック廃棄物と炭素排出量を削減するように設計された持続可能なカード発行戦略の展開を加速している。このエコフレンドリーカード大幅なシェア増加(2022年の数字の14%と比較して7%ポイント増加)は、イシュアーバンクがペイメントカードの素材としてPVC(Polyvinyl Chloride、ポリ塩化ビニル)から移行しているペースと規模を浮き彫りにしている。
非接触決済プロダクツのシェアの推移
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