2016年5月23日8:42
STマイクロエレクトロニクスは、NFCチップとセキュアエレメントを提供する世界的な半導体メーカーだ。同社では、2016年2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress2016」において、決済や乗車券などのセキュアなアプリケーションをウェアラブルに実装したデモを行った。
ペイメントや乗車券のアプリケーションを実装可能
さまざまな角度からウェアラブルで読み取りができる
STが実施したウェアラブルのデモでは、Visa、MasterCardのペイメント、鉄道用のMIFAREアプリケーション等を実装し、トラディショナルウォッチで支払いができるもの。すでに同サービスはオーストラリアでフィールドテストが行われている。特徴として、ウェアラブルは、かざす角度が限られる場合が多いが、双方向から読み取りできるため、使用者の満足度が高いという。
セキュアエレメントとNFCコントローラーを提供するチップベンダーは他にもあるが、「カードエミュレーション、NFCリーダ、ピアtoピアといったパフォーマンスについては、弊社の方が優れていると感じています」と、STマイクロエレムトロニクス マイクロコントローラー,メモリ&セキュアMCU(MMS)グループ セキュア・マイクロ・コントローラー・ディビジョン セキュア・モバイル&NFCマーケティング・マネージャー Thierry CRESPO氏は説明する。
STでは、ICサプライヤのamsとの協業により、ウェアラブル機器に実装できるNFC用のアンテナを提供している。また、アプリケーション構築を支援。ハードウェアやソフトウェアを含めた、ドキュメンテーションとテクニカルサポートを1つのセットで提供している。ソフトウェア開発キット(SDK)では、セキュアエレメントの管理、Bluetooth Low Energyとの通信、NFCコントローラーの設定に必要な機能を提供可能だ。
ウェアラブル向けは15万ユニットを出荷
米国と中国が市場拡大を牽引
すでに同社のウェアラブル機器向けの開発エコシステムは多数の実績があり、「昨年、ウェアラブル向けは15万ユニットを出荷しています」とCRESPO氏は話す。現在、引き合いが強く寄せられているのは米国と中国のマーケットだ。特に米国ではApple Watchが登場して以降、引き合いが増加しており、市場で浸透していくとみている。
なお、パートナーは、Gemalto、ギーゼッケ&デブリエント(Giesecke&Devrient:G&D)、日本の大日本印刷などとなり、中国でも複数社と連携している。また、国際標準規格のISO/IEC 14443 TypeA/Bに加え、日本や香港で利用されているFeliCaへの対応も可能とのこと。さらに、ICタグにも対応できる。
今後のモバイルNFCのマーケットについてCRESPO氏は、「VisaやMasterCard、American Express、銀聯のペイメントブランドに対応したトークンサービスプロバイダのマネジメントが整えば、さらに浸透していくと考えています。また、NFCのセキュアエレメントは、AppleやSamsungへの搭載が進んでおり、中国のマーケットが盛り上がってきましたので、普及がさらに進むと期待しています」と語った。
※取材は2016年2月22日~25日までスペイン・バルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2016」にて