2021年3月25日13:33
Datachainは、複数の異なるブロックチェーン間のインターオペラビリティ(相互運用性)実現に向け、NTTデータと技術連携を開始した。
今回の技術連携の一環として、IBC(Inter-Blockchain Communication)による取引を仲介する第三者に依存しないRelay方式を用いた、複数の異なるブロックチェーン間における価値移転の自動化に関する実証実験を実施した。IBCを用いたHyperledger Fabricと異なるブロックチェーン間のインターオペラビリティの実現は世界初となる。同実証実験により、取引を仲介する第三者に依存せずにインターオペラビリティを実現する方法として、Datachainが開発を行うCross Framework及びIBCモジュールの技術的有用性が検証された。
取引を仲介する第三者に依存しないインターオペラビリティ手法としては、「HTLC方式」と「Relay方式」の2つの方式があると言われているが、Datachainが技術協力を行っているNTTデータでは、技術研究テーマの1つとして「ブロックチェーンのインターオペラビリティ」に着目し、取引を仲介する第三者に依存せずに「価値の移転」と「権利の移転」を同時実行することを目的に、実証実験を進めていた。
その中で、HTLC方式では、サービス運営者の決済機能として、①異なるブロックチェーン基盤上において、②秘密鍵をサービス利用企業自身で管理したまま、③取引を自動実行する、という3つの命題(トリレンマ)を同時に解決することは大変難しいものだという。
Datachainが開発するCross FrameworkおよびIBCモジュールでは、互いのブロックチェーンで相互検証を行う「Relay方式」を採用しており、HTLC方式におけるサービス運営上のトリレンマ解決の可能性が考えられる。
このような背景から、今回、複数の異なるブロックチェーン間の価値移転におけるCross FrameworkおよびIBCモジュールの技術的有用性を検証するために、NTTデータと共同で実証実験を行ったそうだ。
同実証実験では、Hyperledger Fabricで構築された「貿易プラットフォーム」と、Cosmos(Tendermint)で構築された「決済プラットフォーム」を用意し、「貿易プラットフォーム上の貿易文書の移転」と「決済プラットフォーム上の資金の移転」のDvP決済を行った。
貿易業務において、サービス利用者である輸入者と輸出者の行う作業を、「HTLC方式」と「Relay方式を実装したCross Framework及びIBCモジュール」について比較すると、下図のようになる。HTLC方式では、サービス利用者である輸入者・輸出者が作成した双方のトランザクションを、サービス利用者自身が確認・署名するため、取引中の煩雑な対応が必要だ。サービス利用者による確認・署名を、サービス運営者が代行し自動実行することも可能だが、秘密鍵の管理に対する制約が大きいため、サービス運営者にとって大きな負担となる。
一方、Datachainが開発を行うCross FrameworkおよびIBCモジュールは「Relay方式」を実装しており、サービス利用者が管理者に秘密鍵を渡すことなく、取引の自動実行(取引中のサービス利用者の操作は不要)を行うことができる。また、HTLC方式ではサポートが難しい任意のデータの連携が発生するような複雑なスマートコントラクトも実装可能だ。
これらの特性から、Cross FrameworkおよびIBCモジュールを活用することで、貿易プラットフォームと決済プラットフォームをまたぐAtomic Swapの自動実行が実現でき、トリレンマ解決への見通しが立ったという。
今回の実証実験の結果を受けて、デジタル通貨を利用した効率的かつ実用性、利便性に優れた決済の可能性が確認できたことを踏まえ、①トレードワルツが運営する貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」において貿易関連証券と資金の価値移転の実現、②NTTデータとSecuritize Japan株式会社が共同研究している証券プラットフォームにおけるDvP決済の実現、③電力取引における、P2P電力や非化石証書に係る権利と資金の同時移転、④保険領域における、診断データを管理するブロックチェーンと保険契約を管理するブロックチェーンの連携による保険金の自動支払の実現(デジタルアセットの交換だけでなく、任意のデータの連携も可能)、といった領域への活用を想定する。
海外においてもデジタル通貨を用いた決済のニーズは高く、金融機関を含めさまざまな企業がインターオペラビリティに取り組んでいる。DatachainはNTTデータと協力し、海外での取り組みについても積極的に推進していく方針だ。
まずは、異常系の検証やパフォーマンスの向上など、より実用化に向けた検証を行い、早ければ2022年度以降の商用化を目指す。
この記事の著者
ペイメントナビ編集部
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