「ICカード化に関する諸外国調査」を実施、米国では課題であった中型加盟店が2016年に対応の見込み(日本クレジットカード協会)

2016年11月8日8:50

日本クレジットカード協会(JCCA)では、2015年度に「IC化に関する諸外国調査」を実施した。同調査によると、ICカード化が遅れている米国や韓国での対応が進むことで、IC化対応に後れを取る日本に偽造カード不正被害が流入するリスクは否定できないとした。

米国と韓国では国家レベルでICカード化が進む
日本では加盟店部門での不正が増加

JCCAが「IC化に関する諸外国調査」を実施した背景として、諸外国のIC化の推進事例、効果とIC対応後進国への偽造カード被害のリスク流入の実態、およびクレジットカード決済端末のIC化の先進事例の調査・分析を行い、日本における「キャッシュレジスタ/決済端末のIC化」の加速度的な推進を実現するためである。同調査の目的は、公知情報に留まらない実態情報の収集を図ることで、IC化の遅延に伴う偽造カード被害のリスク流入の見極め、および日本の商慣習・インフラ環境に鑑みたIC化の推進方針の考察を行い、実現方法の検討に繋げることとしている。

日本クレジットカード協会 事務局長 山口哲史氏は、「政府で取り組みを進める韓国に加え、世界最大のセキュリティホールとなっていた米国も国を挙げてのIC化が進んでいるため、日本がセキュリティホールになる可能性を懸念し、諸外国におけるIC化の取り組みや実態等について生の声も確認することで、日本におけるIC化の参考とすべく、昨年度調査を行いました」と説明する。

右から日本クレジットカード協会 事務局長 山口哲史氏、事務局調査役菱沼孝安氏
右から日本クレジットカード協会 事務局長 山口哲史氏、事務局調査役菱沼孝安氏

具体的な調査対象は、前述の米国、韓国に加え、イギリス、カナダ、オーストラリア、シンガポール、中国、台湾となった。調査の方法は、各種公的情報や関係者へのヒアリング、米国現地視察(ICカード推進団体や流通店舗)により実施した。

同調査によると、SEPA( Single Euro Payments Area)によるIC化が進んだ欧州では、同エリア内での偽造被害が減少し、セキュリティホールである米国に犯罪者が流れた。例えば、イギリス発行カードの海外での不正被害額は、欧州各国では抑えられているが、米国での被害が増加している。一方、韓国も2015年7月以降の法制化により、偽造被害額が減少するなど、効果が生まれている。

「日本の傾向をみると、2012~2014年比で、イシュイング(カード発行)部門では-23%と減少していますが、加盟店(アクワイアリング)では37%と上がっています。つまり、日本国内で海外のカード会員が使用した対面での偽造被害が目立っています」(山口氏)

米国では大型加盟店12社のICカード化が完了
日本に偽造カード被害が流入するリスクを懸念

米国のPayment Security Taskforce(ペイメント・セキュリティ・タスクフォース)の公開情報によると、2015年末の米国のICカード化目標は、発行枚数で5.7億万枚、決済端末のIC化が47%、Chip-On-Chip(ICカードとIC決済端末)取引が27%となっている。

「米国では、現時点で未対応の店舗を含め、2017年までにICカード化を100%達成させようとしています。米国のICカード化の実態として、大型加盟店は概ねIC化が完了、中型の加盟店は2016年にIC化の達成を目標としていますが、ネックとしては加盟店が個々に費用負担を強いられること、また、ソフトウェアの提供者の対応が追い付いていない部分もあるそうです。小型の加盟店は、日本のCCT端末のような専用端末を導入することにより、IC化の対応が順調に推移しています」(山口氏)

⽇本への偽造カード不正被害の流⼊リスク|アメリカのIC化の実態:各ステークホルダーの推進動向
⽇本への偽造カード不正被害の流⼊リスク|アメリカのIC化の実態:各ステークホルダーの推進動向

例えば、米国の全売上の23%を占めるトップ15社のうち、非対面取引を行う2社を除いた12社がICカード対応を実施しているように、大型加盟店でのIC化は進行している。米国の大手加盟店によると、このまま放置を続ければ、現在の4,200億円の不正被害が3倍になる懸念があるため、システムの投資に至ったそうだ。

また、米国の中型加盟店は、日本の大手POS加盟店に近い部分がある。現状、ソフトウェア提供者の対応が間に合っていないが、2016年には幅広い加盟店に向けて対応が行われるとした。山口氏は、「日本のPOS加盟店は各企業へのカスタマイズ対応が多いですが、米国の場合は汎用化、標準化されたソフトウェアを使うケースが多いため、日本よりもスムーズに対応できるとみられています」と説明する。
 
米国でのIC化の進展により、「IC化対応に後れを取る日本に偽造カード不正被害が流入するリスクは否定できません」と山口氏は懸念する。ICカードの標準団体であるEMVCoの調査によると、米国は2014年の全取引におけるChip-on-Chip取引割合が0.12%であったが、IC化未対応国へ偽造カード不正被害がシフトした欧州での例でもわかる通り、Chip-on-Chip取引比率が27.0%(2014年)と米国に次いで低いアジア太平洋エリア、中でも人口の多い日本にシフトする可能性があるとした。

⽇本への偽造カード不正被害の流⼊リスク(JCCAとしての結論)
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