2017年3月8日20:45
一般社団法人日本ICカードシステム利用促進協議会(JICSAP)は、2017年2月より、NFC(Near Field Communication)サービスの提供においてHCE(Host Card Emulation)技術を使ったモバイルシステム開発ガイドラインの作成を開始したと発表した。
今後、JICSAPは、2017年夏をターゲットとして、現在ICカードシステムを利用している企業・団体、業界団体、機器メーカ、システムインテグレータ向けに、「HCE 開発ガイドライン(仮称)」の作成を進めていくという。
2014年からはスマートフォンに搭載されるOSの1つであるAndroidにHCE機能が搭載され、VisaやMastercardなどの国際決済ブランドが採用したことから、海外ではHCE技術を含むNFC携帯電話を使ったサービス事例が増えている。一方、日本では、携帯電話の先進国としておサイフケータイという名称で普及が進み、2004年から現在にいたるまで一定の割合でNFC携帯電話が活用されてきた。JICSAPの調べによると、おサイフケータイ用ICは2015年度末までの累積で2 億7,600万個出荷されている。
こうした状況の中、JICSAPではアプリケーション研究部会において、2014年度よりHCEの可能性について検討を行ってきた。2015年3月にはデモシステムを構築し、特に性能面での実用性について確認したという。2015年度は、その特徴を生かしたサービスとして、決済や交通用途以外ですでにICカードで実現されているサービスを広がる可能性があることを確認した一方で、システム全体の実装方法やセキュリティ対策に関する情報が乏しいことがわかったそうだ。そこで、2016年度は具体的な実装方法やセキュリティ対策を検討していくために、商用で利用されているカード仕様を管理する様々な団体の協力を得て、各団体の仕様を参考として、「HCE 開発ガイドライン(仮称)」の作成を開始した。
「HCE 開発ガイドライン(仮称)」のは、個人認証サービスを提供する企業、団体、機器メーカ、システムインテグレータに幅広く活用してもらうため、実際に利用されているカード仕様を参考にしつつも特定の仕様に依存することのない内容となることを目指している。
同ガイドライン作成にあたり、キャンパスカード等で広く普及している個人認証用カードフォーマットの管理団体である、一般社団法人FCF推進フォーラムの協力を得ることが決定している。また、今後、その他の関連団体にも協力を得ることを検討している。
今回JICSAPが作成する「HCE 開発ガイドライン(仮称)」を活用することで、現状ICカードで実現されていた学生証や社員証などの物理的な個人認証サービスの一部がNFC対応の携帯電話で利用可能となるだけでなく、急速に普及しているインターネットを使ったモバイルサービスと物理的な個人認証サービスの融合が進むことで、利用者、サービス提供者、業界団体、システムベンダが安心してモバイルサービスを活用できるようになることを目指す。
なお、JICSAPは1993年3月に、ICカード仕様の標準化、アプリケーションの調査研究、モデル構築、普及・啓発活動や利用技術の検討などを目的として設立された一般社団法人であり、2017年2月20日現在、会員数40社で活動している。