デビットカード決済で顧客や加盟店とのリレーションを強化、静岡銀行のキャッシュレス推進は?

2024年10月22日9:00

ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、2024年10月2日にVisaデビットと静岡銀行におけるキャッシュレスによる地域活性化についての記者説明会を開催した。キャッシュレス化が進む中、クレジットカードやコード決済に注目が集まっているが、デビットカードの取扱高と発行枚数も年々、着実に増加傾向にあるという。Visaでは金融機関と連携しVisaデビットの推進に力を入れているが、近年では、金融機関と顧客のリレーション構築において、デビットがカギとなることが見えてきたという。静岡銀行では、昨年よりアクワイアリングを開始。2024年3月からは、Visaブランドのデビットカード発行もスタートし、アクワイアリングとイシュイングの両軸で、県内のキャッシュレス化を推進してるそうだ(関連記事)。

静岡銀行 デジタルチャネル営業部長 大石 康太氏

Visaデビット発行は2,500万枚突破
タッチ決済比率は7割に

Visaはこの5年の目標として、日本の決済がスマート、かつパーソナルなものとなることを目指している。デビットはその1つの有益なソリューションだという。Visaデビットの発行銀行数は41、発行枚数(2024年6月現在、法人デビットを含む)は2,500万枚を突破している。

経済産業省のキャッシュレス比率は39%を超えており、2025年に40%を超えることは間違いない。デビットは2017年に1.1兆円だったが2023年は3.7兆円に伸びている。「デビットはコード決済に次いで伸び率が高いです」(ビザ・ワールドワイド・ジャパン コンシューマーソリューションズ ディレクター 松本 直久氏)。

この6年の伸びを見ると、新型コロナウィルス感染拡大による巣ごもり消費の拡大、タッチ決済の普及などが伸びをけん引した。「対面のタッチ決済比率は約40%ですが、デビットはタッチ決済比率が高く、70%になっています」(松本氏)。

また、イシュアも徐々に拡大しており、発行枚数も右肩上がりだ。この2~3年は店舗でも気軽にタッチ決済でデビットが使える環境が整ってきた。

 

「銀行アプリ×デビット」で顧客接点構築
「Everyday Banking」が可能に

銀行にとっては口座のお金をそのままデビットで使用できるため、現金のハンドリングコストを削減するとともに、顧客との関係を強化できるそうだ。また、利用履歴の確認が増加するなど、顧客にスマートフォンアプリを利用してもらうことにつながるデビットは、顧客接点を増やすことに貢献する。

若年層から利用可能なデビットで接点を構築することで、銀行を継続して利用してもらうことができるという。Visaがマクロミルと実施した調査によると、デビットの利用者はインターネットバンキングや銀行アプリの利用が多い結果となった。

例えば、「Everyday Banking」として米国のBank of America、英国のLLOYDS BANK、オーストラリア・ニュージーランド銀行などは日常的な利用を促している。銀行にとっては、普通預金口座の残高増に寄与することも挙げた。

地域の隅々までアクセプタンスを広げ、地元経済の活性化につなげるため、地域金融機関の果たす役割が大きくなっているという。例えば、地域の商店や公共交通機関でも便利に使える世界を5年間で構築していきたいとした。

なお、デビットカードの発行イシュアは近年それほど増えてはいないが、現在はメガバンク、ネット銀行、地域金融機関などが発行しており、金融機関の数を増やすというよりは、すでに発行している銀行のカード発行枚数を伸ばすことを意識しているそうだ。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン コンシューマーソリューションズ ディレクター 松本 直久氏

静岡でエリア決済ネットワークを構築
データの高度化にも注力

具体的なVisaデビット発行の事例として、静岡銀行 デジタルチャネル営業部長 大石 康太氏が同行の取り組みを紹介した。

静岡銀行がしずおかフィナンシャルグループとしてキャッシュレス事業強化を考えたのは2022年頃となる。2021年度のキャッシュレス比率は32.5%だったが、静岡県は25%にとどまっていた。政府が掲げるキャッシュレス比率40%の達成に向けて、静岡県が大きく全国平均を下回っている状況の中、「地域の金融機関として先頭に立ってキャッシュレス化を推進していくべきではないかという考えに至りました」と大石氏は話す。

しずおかフィナンシャルグループが策定した「第1次中期経営計画~Xover」(2023年-2027年度)では、地域競争戦略で12のテーマを掲げている。その中のデジタル社会の形成において、地域のキャッシュレス化を明記し、重点的に取り組むこととなった。

同行の考える地域のキャッシュレス化として、現金以外のキャッシュレス手段の提供だけではなく、同行の口座保有者を加盟店に送客することで、店舗の売り上げ増加につながる。また、口座利用者はキャッシュバックなどのメリットを享受でき、消費を喚起できる。この循環が回れば地域経済が活性化する。同行では、これをエリア決済ネットワークとして定義している。

また、データを活用した営業活動の高度化として、「キャッシュレス事業で得られるさまざまなデータは、お客様を理解するために非常な有用なデータになると考えています」と大石氏は説明する。

独自キャッシュバックで加盟店に送客
多様化する決済対応で口座利便性を高める

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