2018年10月19日8:00

モノのインターネットであるIoT (Internet of Things)における支払いであるIoTペイメントが注目されている。スマートフォンやタブレット端末、スマートウォッチなどのウェアラブル、または音声によるホームアシストが備わり、決済も可能なスマートスピーカーであるAmazon AlexやAmazon Echo、Google Home、Google Home Miniなどにより、仮想現実体験(Virtual Reality Experience)や拡張現実体験(Augmented Reality Experience)が可能になり、インターネットに接続した車であるコネクティドカーなどにも広がりを見せている。当面はクレジットカードやデビットカードといった従来の支払いのインフラストラクチャを使用して行われるIoTペイメントがメインとなるであろうが、将来的には従来の支払いインフラを超えて拡張されることが見込まれている。今回は、フューチャーペイメント要覧の第2章から、IoTペイメントの一部について紹介する。

IoTペイメントとは

IoT (Internet of Things)には、現在インターネットに接続されているデバイスの今後の進化と、新しく接続されたデバイスが相互に作用するM2M(Machine to Machine)の経済への影響といった2つの要素がある。より多くのデバイスをインターネットに接続することで、消費者と企業の両方にとって新しいデジタルエクスペリエンスを開発することができる。支払い能力と支払いを受け入れる能力の両方を含むペイメントトランザクションである。こうしたデジタルペイメントは、ブラウザとモバイルペイメントのエクスペリエンスを補完する支払い可能なIoTデバイスを含めることで、進化を続けていく。

消費者は、インターネットに接続された自動車であるコネクティドカーや、インターネットに接続されたテレビや冷蔵庫などの家電、そして最近ではウェアラブルを含む、新たに接続された様々なデバイスを用いて、IoTペイメントを行うことができるようになった。また、IoTペイメントは、街中のパーキングメーターや各種自動販売機など、多数の新しいタッチポイントが増加することで、小売業のスマートリテール化を促している。その結果、銀行などの金融機関、ペイメントサービス・プロバイダー、及びテクノロジー企業の多くは、セキュアなペイメントのエクスペリエンスを提供する革新的な機能を作り出すことができるようになっている。

IoTペイメントの主要なIoT環境

Secure Technology Allianceの『IoT and Payments: Current Market Landscape』によると、IoTペイメントは、自動車や家(Home)、ウェアラブル、産業(Industrial)、小売(Retail)など様々な環境で実行できるとしている。

・自動車

インターネットに常時接続しているスマートカーには、緊急サービス、スマートな運転支援、予測に基づくメンテナンスから快適さと情報の提供まで、消費者にとって幅広い便利な機能が含まれている。安全な車両と、ナビゲーションの地理的位置情報や音声作動制御などの技術を活用することにより、インターネットに常に接続された車であるコネクティドカーは、ペイメントフォームファクターとして機能することができる。車のIoTペイメント機能は、運転手にドライブスルーの利用のほか、駐車場、ガソリン、通行料、食品などさまざまな商品やサービスの支払いにシームレスな取引を提供することができる。

・家(Home)

スマートホームは、オートメーション、持続可能な生活、効率的なエネルギー消費、安全性、セキュリティ、及び利便性に対する消費者の要求を満たす可能性があるため、IoTで最も急速に成長していている分野のひとつである。スマートホームのデバイスには、以下のものが含まれている。

  • センサーやその他の手段によるデータキャプチャ機能
  • 組み込みまたはクラウドベースの処理インテリジェンス
  • インターネット接続(モバイルネットワークやWiFi、Bluetoothなどのホームネットワーク)

 なお、インターネットに接続されたスマートホームのデバイスには、サーモスタットからアプライアンスまでが含まれる。

・ウェアラブル

スマートウォッチやリストバンドが主なウェアラブルフォームファクターであるが、トレンディなリストバンドや、ヘッドフォン、リング、ネックレス、シャツ、靴、眼鏡などの他のフォームファクターもある。ウェアラブルは、インターネットに接続している間にスマートセンサーやチップを使って情報を処理できるため、様々なユースケースを強化できる。ウェアラブルはアクティブとパッシブとに分けられ、アクティブウェアラブルには、独自のバッテリーとインターネットへの接続性があり、パッシブウェアラブルは、外部のペアデバイスから電源とインターネットへの接続性を有している。

コンタクトレスペイメント(非接触決済)のインフラストラクチャが拡大し、POSで普及するにつれて、ウェアラブルは支払いのための完全なフォームファクターとなる。ウェアラブルは、組み込みセキュアチップをホストするか、セキュアなソフトウェアエミュレーションであるHCE(ホストカードエミュレーション)やTEE(Trusted Execution Environment)などを使用し、セキュアな支払いトランザクションを実行できる。こうしたウェアラブルは、少額の現金による決済をスマートにしたい人にとっての関心事項である。

・産業(Industrial)

工業のデジタル化は世界的な傾向である。デジタル化は、機械のパフォーマンスを最適化することによって、生産性を把握し、コストを削減することができる。マシンの接続性が高まるにつれ、セキュアなプラットフォームがますます一般的になり、セキュアな通信を確保し、ソフトウェアパッチを容易にし、パフォーマンスを提供することができる。工業のデジタル化は、リアクティブ・サービス・モデルからプロアクティブ・サービス・モデルに移行している。

・小売(Retail)

小売業界はIoT技術を使用してサプライチェーンを最適化し、スマートシェルフを使用して在庫レベルを追跡して補充を行い、商品の妥当性を常に監視している。スマートなプライスタグ(値札)は、需要と市場の動向に基づいて価格設定を変更することで、新しい収益源を生み出している。マーチャントは、顧客が有するデバイスとのインターネットとの接続を活用し、関連製品のアップセルを行い、消費者が在庫を閲覧し、レビューと市場動向を調査し、サービスプランを入手できるようにする。セキュアなインターネットとの接続性により、マーチャントは地理情報サービスや非接触またはアプリ内支払いなどの技術を使用して、スムーズなチェックアウトを顧客に提供する。また、IoTペイメントはアプリ内で行われるか、デバイスに埋め込まれたコンタクトレスペイメント(非接触決済)機能によって行われる。

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