2024年5月16日9:00

航空会社の顧客のロイヤリティ(ご愛顧)を勝ち取り、顧客のシェアを拡大し、企業収益の拡大を図るためのプログラムであるFFP(Frequent Flyers Program、多頻度搭乗者向けプログラム)は、COVID-19 (新型コロナウィルス)のパンデミック禍、航空業界の未曽有の危機を経て、今なお進化を続けている。今回のシリーズは、こうしたFFPについて、「FFPの歴史」、「FFPのイノベーション」、「ユナイテッド航空のマイレージプラス・プレミアステータス・マッチ・チャレンジ」、「航空会社とFFPとエンベディドファイナンス」、「エアーフランス‐KLM航空のFFP」5つに分けて、進化を続ける海外のFFPを紹介してみたい。

和田文明

【連載】
1、FFPの歴史
2、FFPのイノベーション
3、ユナイテッド航空のマイレージプラス・プレミアステータス・マッチ・チャレンジ
4、航空会社とFFPとエンベディドファイナンス
5、KLMオランダ航空のFFP

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ポイントカード・マーケティング市場要覧~Contents~

1、FFPの歴史

まず、「進化を続けるFFP」シリーズの第1回目は、1981年にスタートし、45年足らずFFPの歴史を短く振り返ってみたい。なお、日本のFFPは欧米から16年程遅れて1997年にスタートしている。日本のJAL(日本航空)やANA(全日空)のFFPのこれまでの歩みについても触れておきたい。

はじめに

日本では、航空会社の特典プログラムは一般に“マイレージプログラム”と呼ばれているが、アメリカやイギリスなどの英語圏では、正式には“Frequent Flyers Program”(多頻度搭乗者向けプログラム、以下「FFP」という)と呼ばれている。ちなみに、ホテルチェーンの特典プログラムはFSP(Frequent Stayers Program、多頻度宿泊者向けプログラム)と呼ばれ、百貨店など小売事業者の特典プログラムはFBP(Frequent Buyers Program、多頻度購入者向けプログラム)と呼ばれている。

FFP(Frequent Flyers Program)は、航空会社が自社の搭乗顧客のロイヤリティ(ご愛顧)を勝ち取り、売上促進するために提供するマーケティングプログラムを指す用語である。FFPは通常、顧客が搭乗した区間のマイル数をポイントまたはマイルポイントとして獲得できるように設計されていて、これらの獲得したポイントの特典は、無料航空券のほか、一般席からビジネスクラスへのアップグレード、その他の特典に引き換えることができるという仕組みである。

日本のみならず世界のほとんどの航空会社は、2020年初頭に発生したCOVID-19(新型コロナウィルス)のパンデミック禍で辛酸舐めたが、アフターコロナにおける航空業界の再生の切り札の1つがFFPで、航空各社は現在真剣にFFPの見直しを行っている。また、FFPは、非金融事業者である航空会社と金融サービスを結び付ける“エンベデッド・ファイナンス”(Embedded Finance)の有効なツールとみなされている。

今回は、こうした欧米の航空業界におけるFFPのアフターコロナにおける状況を紹介してみたい。

航空会社のFFP(Frequent Stayers Program)は、カスタマーロイヤルティ(Customer Loyalty)プログラムである。カスタマーロイヤルティプログラムとは、顧客から“ご愛顧”を勝ち取るプログラムを意味する。カスタマーロイヤルティプログラムは、自店での購入金額などに応じて特典ポイントなどのインセンティブを顧客に提供し、顧客が獲得した特典ポイント数に応じてポイントの特典として各種報酬(Rewards)を与えたり、エリートプログラムなどで顧客の貢献度に応じて各種メンバーシップサービスを提供したり、特典の報酬をアップし、顧客のさらなるご愛顧を勝ち得るマーケティングプログラムである。こうしたカスタマーロイヤルティプログラムは、顧客の固定化、囲い込みを図ることにより、利益の拡大を目指すものである。

 

今日の大手航空会社のFFP(Frequent Stayers Program)はホテルやレンタカーなど他業種と提携し、「マルチポイント」とか「共通ポイント」と呼ばれている“マルチカスタマーロイヤルティプログラム”(以下“マルチポイントプログラム”という)であり、CLP(Coalitional Loyalty Program)“連合ロイヤルティプログラム”でもある。

マルチポイントプログラムの始まりは、1930年代にアメリカで始まったS&H(Sperry & Hutchinson)社のグリーンスタンプといわれている。グリーンスタンプを始めたバージニア州のS&H社(創業:1896年)は、地域の食品店や小売店、給油所にグリーンスタンプを売り、小売事業者は商品を購入してくれた消費者にボーナスとして購入金額などに応じてグリーンスタンプを提供した。消費者は、インセンティブとして提供されたグリーンスタンプを24ページ立ての“コレクターブック”というグリーンスタンプ専用の張り込み帳にスタンプを貼り付けてスタンプを集めた。“コレクターブック”1冊につき、1,200ポイント相当のグリーンスタンプを集めることができた。グリーンスタンプを貼付した張り込み帳の数量に応じて、グリーンスタンプの特典カタログに掲載された各種日常品やギフト商品、特典(報酬)が提供された。

 

本格的な“マルチポイントプログラム”の先駆けは、およそ35年以上前の1988年にイギリスのマーケティング会社がブリティシュ・エアー・ライン(英国航空)とタイアップし、航空会社のFFPと同様に獲得したポイント数に応じて無償の航空券の特典を提供することをアピールし、イギリスのスーパーマーケットチェーンやガソリンスタンドチェーン、ホテルチェーンなど各業界のトップブランド企業を募ってスタートした“Air Miles”(図1)である。イギリスのAir Milesのほかにも、日本のTポイント(現、Vポイント)、ドイツのPAYBACKや韓国のOKキャッシュバックなどナショナルベースで有力な“マルチポイントプログラム”がいくつも誕生している。

(図1) Air Milesカード

サードパーティのクレジットカードやデビットカード、それにIC電子マネーに付帯されている決済金額に応じて提供されるFUP(Frequent Users Program)は、カード発行会社にとってのカスタマーロイヤルティプログラムであると共に、カード加盟店(マーチャント)が参加するCLP(Coalitional Loyalty Program、連合ロイヤルティプログラム)の要素を有している。

最初に本格的にポイントプログラムを導入したサードパーティのクレジットカードは、日本のJCBが1980年代に導入した “ジョイジョイプレゼント”であるといわれている。また、クレジットカードのマーケティングにおいて大きなインパクト与えたカスタマーロイヤルティプログラムは、アメリカの大手自動車メーカーのGM(ジェネラルモーターズ)が1992年に導入したコ・ブランディドクレジットカードのポイント特典プログラムで、クレジットカードの利用額に応じて獲得した特典ポイントの報酬を車の購入代金に充てることができるスキームである。また、航空会社のFFPやホテルチェーンのFSP機能を搭載したコ・ブランディドクレジットカードのカード1枚当たりの年間カード決済金額は、他のクレジットカードに比べて大きいといわれている。

FFPの歩み

世界で最初の本格的な FFP は、1981 年5月1日にアメリカの大手航空会社であるアメリカン航空によって開始された“AAdvantage”(アドバンテージ・プログラム)(図2)というプログラムである(2年前の1979年にアメリカのローカル航空会社であるテキサスインターナショナルエアーラインがFFPを導入していた記録がある)。

当時のアメリカの航空業界は、1970年代後半のジミー・カーター大統領による航空自由化政策により航空会社の収益が大きく低下し、収益の改善を図ることが急務であった。収益の改善を図る窮余(きゅうよ)の一策として多頻度利用の優良顧客囲い込みサービスであるFFP のAAdvantageを開始し、わずか1年間で100万人以上の会員を獲得している。FFP は、航空会社にとって従来からの多頻度利用の優良顧客を引き留め、新しい顧客を引き付けるための貴重なツールで、よく搭乗してくれる上顧客をより頻繁に利用するよう奨励するのに役立ち、報償として提供される無償航空券は旅行費用を節約したい旅行者にとっても価値のあるツールとなった。現在、LCC(格安航空会社)を除いて、ほとんどの既存の大手レガシーキャリアは FFPを導入している。

(図2)アメリカン航空の“AAdvantage”カード(1990年代)

世界の航空業界には、大きく分けてレガシーキャリア(大手航空会社)とLCC(Low Cost Carrier、格安航空会社)2つの主要な航空会社モデルがあるが、FFPを導入しているのは主にレガシーキャリアの方で、1部のLCCを除いてLCCではFFPは導入されていない。

こうしたFFPの歩みを振り返ると、1980年代以降の世界の航空業界の変化と密接に関係していることが分かる。今後も、航空業界の競合やITの進化に合わせて、FFPプログラムは変革していくものと思われる。(表1)は、世界のFFP(フリークエントフライヤープログラム)のこれまでの歩みを示したものである。

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