2018年4月16日8:00
2017年に発行開始10周年を迎えた電子マネー「WAON」の年間決済金額は2015年に2兆円を突破し、国内NO.1だ。発行枚数は2017年末時点で6,860万枚となった。利用金額の一部を地域に還元する「ご当地WAON」も好調で、全国各地で約140種類が発行されている。現在、グループ店舗での「WAON」の決済比率は約3割。グループ外での利用も約10%まで増えている。
「ご当地WAON」の稼働率は約1.7倍
シニアの取り込みにも成果
イオンリテールが発行する電子マネー「WAON」は、2017年4月27日で10周年を迎えた。2017年末時点での発行枚数は6,860万枚、加盟店数は37万3,000カ所。国内電子マネー市場が約5兆1,900億円と言われる中(日銀決済動向より)、WAONの年間決済金額は2兆円を超え、トップのシェアを占めている。
このWAONカードの好調を牽引してきた1つに、2009年に発行を開始した「ご当地WAON」がある。「ご当地WAON」は、自治体などとの連携によって発行し、全国どこで利用されても決済金額の一部がその地域に寄付金として還元される。現在、全国各地で約140種類が発行されている。
北海道苫小牧市の地域共通ポイント「とまチョップポイント」機能を搭載した「とまチョップWAON」、香川県の加盟店でマイルが貯まる「めぐりん」機能を搭載した「めぐりんWAON」など、地域活性化に貢献している成功事例も出てきている。また、さっぽろ雪まつりや雪ミク スカイタウンで発行した「SAPPORO*雪ミクWAON」は初年度発行枚数3万枚を超える人気となった(雪ミクWAON発行枚数は2017年末時点で約5万枚) 。
イオンリテール 営業推進部 電子マネー推進部長 上山政道氏は、「ご当地WAONは地域に愛着を持ち、利用意向の高い人が携帯しているため、月間稼働率はWAON全体平均の約1.7倍と、顕著に高くなっています」と話す。
また同社では、稼働率の向上を図るため、シニアをターゲットとした施策を積極的に行っている。55歳以上限定の「グランドジェネレーション WAON」と、65歳以上限定の「ゆうゆうワオン」を発行し、これらのカードで決済した場合にのみ5%OFFや100WAONポイントプレゼントの特典を受けられる「G.G感謝デー」を設定。シニアは、一度使って便利さを実感すると継続して利用する比率が高いといい、入会促進に力を入れている。
北海道のグループ外利用率は10%を超える
公共サービスでの利用も視野に
加盟店開拓については、利用頻度の高い業態を中心に進めている。ドラッグストアや地元密着型のスーパーマーケットなどだ。その結果、グループ外でのWAONの利用は増え、10%に近づきつつある。札幌駅前の商業施設、JRタワーや、コンビニチェーンのセイコーマート全店舗でも利用可能となっている北海道などでは、グループ外利用がすでに10%を超えている。
電子マネーの決済単価はクレジットカードなどと比較して低くなるが、WAONの場合、平均決済単価は電子マネーの中でも高い傾向にある。
次の進出先として同社が注目しているのは、職域。企業内に設置された売店・食堂・自販機等でWAONが利用できるところを増やしたいと検討を進めている最中だ。
また最近は、福利厚生の一環として、従業員の禁煙やランニングなど健康維持のための活動に対して“健康ポイント”を付与する健康保険組合が増えている。そういった健保組合と提携し、ポイントをWAONポイントに交換できる仕組みを構築し、交換先を拡大中。
電気やガス、タクシーやバスなど公共サービスへの導入も拡げていくという。
グループ内のキャッシュレス化は約70%
サービス内容をより一層充実へ
イオンリテールの約350カ所のGMS、ショッピングセンターにおける現在のキャッシュレス化比率は、件数ベースで70%程といったところ。
今後のキャッシュレス化を加速していくのは、モバイル決済の進展だろう。これを睨んでWAONでも、「モバイルWAONアプリ」によるスマホ決済を可能にしている。
上山氏は、Alipay、WeChat Payなど海外の決済手段を含め、「お客様の決済へのニーズが多様化する中、グループ内のモバイル決済環境を整備することが急務だと考えています。また、ECにおいては、ブランドプリカの導入なども検討しています」と話す。
同時に、会員にWAONやイオンカードで決済したほうが良い特典を受けられると感じてもらえるよう、サービス内容をより一層充実させていきたい考えだ。