2025年6月12日8:00
和田 文明
連載の最終回は(11回目)は、キャッシュレス大阪・関西万博とKANSAI MaaS(関西MaaS;Mobility as a Service) “について、筆者の実際の体験(万博シャトルバスなど)を交えて紹介してみたい。
Index
(1)キャッシュレス化に影響を与えた大規模国際イベントの五輪と万博
(2)2010年の上海万博とキャッシュレス
(3)台湾と大阪万博
(4)キャッシュレス大阪・関西万博
(5)“ミャクぺ!”
(6)“ミャクポ!”とEXPO2025デジタルウォレットパーク
(7)万博の各種自販機
(8)万博IDと万博デジタル入場券
(9)マルチ電子マネーチャージ機とPOSカード決済端末機
(10)万博の顔認証システム
(11)KANSAI MaaS(Mobility as a Service)
MaaS(Mobility as a Service)とは、移動手段を統合的に提供するサービスのことを指し、交通機関や移動手段を、1つのプラットフォーム上でシームレスにつなぎ、ユーザーが簡単に計画、予約、支払いまで行えるようにする仕組みを指す。MaaS(Mobility as a Service)は、鉄道や路面電車、地下鉄、バス、タクシー、レンタカー、シェア自転車、シェアカーなど、複数の交通手段を組み合わせて最適なルートを提案したり、利用をサポートするものである。
北欧フィンランドの首都であるヘルシンキ(人口67万人、都市圏人口は157万人)は、MaaS (Mobility as a Service)の発祥の地である。ヘルシンキのMaaSは、MaaS Global社が2016年に開発した“Whim”というMaaSアプリが広く普及している。“Whim”は、地下鉄や路面電車、バスなど公共交通機関のチケット購入、タクシーの配車、レンタカーの予約などを一括で行えるアプリで、月額固定料金プランも用意されていて、すべての公共交通機関が1か月間乗り放題になるオプションである。ヘルシンキは“Whim”の導入により、公共交通機関の利用率が大きく向上し、交通渋滞の緩和やCO2排出量の削減が実現され、ユーザーにとっては、移動の利便性が大幅に向上したといわれている。 |
大阪・関西万博2025が開催される関西エリアでは、“KANSAI MaaS”というMaaS(Mobility as a Service)が導入されている。KANSAI MaaSは、阪急、南海、近鉄などの関西地域の主要鉄道7社が提供するスマートフォン向け交通アプリで、関西地域の交通や観光を便利にするための多機能を備えており、今回の大阪・関西万博2025を訪れる国内外からの観光客にとって重宝な交通サービスとして期待されている。
KANSAI MaaSは、大阪を中心とする関西地域の鉄道、地下鉄、バスなどの交通手段を一元的に管理し、利用者がスムーズに移動できるようにするためのアプリで、鉄道、地下鉄、バスなどの交通手段を検索し、予約することができる「交通手段の検索と予約」機能のほか、関西地域の観光スポットやイベント情報を提供し、観光プランを立てるのに役立つ「観光情報の提供」機能やアプリ内で交通費や観光施設の入場料をキャッシュレスで支払うことができる「キャッシュレス決済」機能などが付帯されている。
万博開幕の1年半前の2023年9月にリリースされたKANSAI MaaSアプリは、大阪・関西万博2025では重要な役割を期待されている。
・万博シャトルバスの予約と決済
万博会場へのアクセスをスムーズにするために、KANSAI MaaSアプリを利用して万博駅シャトルバスや万博空港バスの予約と決済が可能で、来場者は事前にシャトルバスのチケットを予約し、購入して、スムーズに会場にアクセスすることができる
・観光情報の提供
万博会場周辺の観光スポットやイベント情報を提供し、来場者が万博以外の観光も楽しめるようにサポートしている
・多言語対応
KANSAI MaaSは、外国人観光客向けに英語などの多言語対応を行っており、万博会場へのアクセスや観光情報などを提供している。
・キャッシュレス決済
キャッシュレス万博をサポートするため、万博への来場者が現金を持ち歩く必要がなく、スムーズに支払いを行えるようにKANSAI MaaSアプリによる移動はアプリ内決済で、キャッシュレスである
KANSAI MaaSアプリでは、次のような関西エリアの短期周遊パスを購入し、アプリ内決済で料金を支払うことができる。 ・KANSAI MaaSワンデーパス(おとな3,000円) |
万博シャトルバス
筆者は、今回の万博の参観に際し、予めKANSAI MaaSアプリをインストールしておいた。目的はKANSAI MaaSアプリを利用して万博駅シャトルバスの予約とその支払いのためである。宿泊先の梅田から万博会場へは、行きは“ウォークスルー型顔認証改札サービス”を実際に見てみたかったので、地下鉄経由(乗換1回)で行くこととし、モバイルSuicaを利用した。帰りは、KANSAI MaaSアプリで予め予約をしておいた万博駅シャトルバスで、会場(西口)から梅田の丸ビルへ帰った。万博駅シャトルバス代金1,000円は、KANSAI MaaSのアプリ内決済で、アプリに紐づけておいたクレジットカードによる決済である。今回利用した万博シャトルバスは乗り合いバスタイプではなく、デラックスな観光バスタイプで、乗換なしで梅田まで帰ることができた。
KANSAI MaaSとIC乗車券のICOCA、PiTaPaとの連携
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